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44.関係性の名前
「たくさんイけたね…好きだよハル、かわいい、愛してる…ハルと結婚できて嬉しい。おれは幸せものだね」
疲労でぐったりとしたハルの身体を抱きしめ、ユキは睦言をささやく。
「ん…おれも………」
「おれも、なに?」
「す、き、だよ…」
気恥ずかしい。
「うん。あとは?」
「えーと……おまえのことをとても大切に思ってる」
「ん、んー!違うな。ヒントをあげましょう。頭文字は"あ"です」
「あほ」
「ハズレ〜」
「あんぽんたん」
「違いま〜す」
「………」
「二文字目は"い"です」
「アインシュタイン」
「オッケーじゃあおれの真似してね。あー」
「うう…もう眠い!!寝るぞ!!!」
「ハル」
「う……わかったよ…」
「あー」
「…あー…」
「いー、しー、てー、るー」
「…いー…しー…てー…るー……」
「はい、それでは繋げて言ってください」
「あいしてる」
「…………////♡」
「と、突然照れるな!!!!///お前から始めたんだろ…!!////」
「んふふ〜♡ハルはもっと素直になる練習しないとね」
「素直って……」
ハルは図星を突かれ、言葉が続かない。
「獣の姿のおれをぎゅーしてるときはあんなに素直なのにね」
「!」
これ以上ない図星である。
「あの時のハルはすごくおしゃべりで可愛いのに」
「別に、とくに何も喋ってないと思うけど…」
確かにモフモフを抱きしめるのは好きだ。
しかし、獣型は人語を話さない。だからハルも自然と無口になっている、はずなのだが…?
「言葉にはしてないけどね。全身で、おれのこと大好き〜〜〜〜ってぎゅーぎゅーしてナデナデしてくれるから、おれはあの時間大好きだよ」
「!!!」
「すごく幸せで、満ち足りた気持ちになる…♡ねえ、今夜もだっこして寝てくれる?」
モフモフの耳をぴこぴこさせて、ド・タイプの顔に迫られると…ほだされてしまう。
「…だ、いてやらなくも、ない……」
「ほんと!?やったぁ」
モフモフ尻尾を大きく振ってユキはあっという間に獣型になり、さあ、どうぞ♡と言わんばかりにモフモフの巨体をベッドに横たえ、ハルに目配せしてくる。
「は〜〜〜……ったく、しようがねぇなあ………////」
呼吸のたびに大きく上下する胸郭。そこにモフンッ!とダイブする、まんざらでもないハルである。喜んだ獣はハルの頬をベロベロと舐めて、「おいやめろ!」とハルは笑う。顔のそばにいるとちょっかいを出されるので下へと移動し、モフモフの大きな尻尾を枕にして横になった。
(は〜〜〜…お日様のいいにおい…獣くさい…)
モフモフに包まれてまどろむ、この時間が一番リラックスして、落ち着ける。
(モフモフ……幸せ……)
(だいすき………………はっ!?)
ハルは過去に恋人がいたことがない。そのせいか、自分の心のうちをどれだけパートナーに打ち明けていいのか、まだ計りかねている…
ユキとの関係性は、友達、恋人、結婚相手…と目まぐるしく変化している。だから尚更、手探りの状態だ。
それでも…
ふたりの関係性の名前がどう変わろうとも…
いまこうして触れ合える時間があれば、名前なんてどうだっていい。おれとおまえ、ふたりで一緒にいられれば。
ーー【婚姻編 完】
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