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93.行き場を失った雫 *
午後の公務を終えたあと、ハルは夕方の授乳のために、足早にパピーたちの元へ急いだ。
しかし、ベビールームをそっと覗き込んだハルは、思わず声を呑んだ。
五匹のパピーウルフたちは、重なるようにしてすやすやと寝息を立てていた。
(か、かわいい……ッ!!)
「皆様、遊び疲れたようで」
乳母の一人がハルに気付いて、小声で囁いた。
「夕方の離乳食をたくさん召し上がって、そのあとウトウトしたと思ったら……!」
「本当に愛らしい若様たちですこと…!」
乳母たちは、パピーたちの成長が可愛くてたまらないといった様子だ。
起こしましょうか、という申し出に、ハルは「いい、ぐっすり寝てるし」と首を振った。
ルーティン通りなら、城にいる間は、乳母たちが寝かしつけや夜間の見守りもやってくれる手筈になっている。
「今夜は公務でお疲れでしょうし、若様たちは夜間も我々がお預かりいたしましょう。それでよろしいですか?」
「……わかりました。では、今夜はお願いします」
***
城での夕食を終え、離れの自室へ戻った頃だった。
(……あ、しまった、張ってきた……)
予期せぬお昼寝により夕刻の授乳を逃したせいで、ハルの胸はたんまりと乳を蓄えていた。
(でも、断乳に向けて頻度を減らせって言われたんだし、これくらいは我慢しないと……)
行き場を失った母乳が胸の中で凝縮され、皮膚を内側から押し広げる。
服の生地がツンと尖ったままの乳頭に擦れ、痺れるような刺激が走った。
(母乳か溜まって、辛い…!)
あの子たちは今、乳母の元で満ち足りて眠っている時間だろう。
けれどハルの身体は、自分の血を分けた子供たちが吸いに来ないことに戸惑い、抗議するようにドクドクと脈打っていた。
一滴、また一滴と母乳が滲み出し、布地を汚していくのではないかという不安に、じっとりとした汗が滲む。
「ハル、大丈夫か?」
ユキの鋭い鼻が、ハルのフェロモンの変化を敏感に捉えた。
そこには、熟しきった果実のような、むせるほど甘い匂いが混じっていた。
ハルが顔を上げると、そこには父親の顔でも、王子の顔でもない、一人のアルファとして自分を見つめるユキの瞳があった。
「……夕方、飲ませられなかったから、おっぱいが溜まってるみたいだ」
ハルは、硬く張り、不自然に膨らんだ胸元を隠すように猫背になっていた。
吸い残された母乳の重みで、胸元はいつもより一回りは大きく、丸みを帯びて膨らんでいる。
その中央では、生地を押し上げるようにして尖った乳頭が二つの小さな突起を作り、隠しようのない自己主張を放っていた。
「お、おい……あんまり見るなよ」
ハルは、服の上からでもはっきりと分かるその「変化」を直視され、顔を真っ赤に染めた。
赤ちゃんにあげるための神聖な乳を、番にまざまざと観察される。
その羞恥心が、張り詰めた胸の奥をさらにじりじりと熱くさせた。
「おっぱい、辛い?」
ユキが、いたわるような優しい声で問いかける。
産後すぐから育児に積極的に参加し、自分も哺乳瓶を握ってきたユキは、「飲ませないと乳が張って、伴侶が苦しむ」という図式を誰よりも深く理解してくれていた。
「うん、結構やばい……朝にまた授乳するけど、それまでに絞っておかなきゃ、まずそうだ」
ハルが困ったように眉を下げて告げると、ユキの手がそっと、張り詰めた生地の上からその熱を確かめるように伸びた。
「……なら、俺が手伝うよ」
ユキの指先がわずかに震える胸元に触れた瞬間、ハルは小さく肩を揺らした。
その言葉は、献身的なパパとしての「手助け」のようでありながら、どこか逃れられない雄の熱を孕んで、静かな寝室に響いた。
***
城の寝室は、外の静寂を吸い込んだようにひっそりとしていた。
ハルのパジャマの裾に、ユキの大きな手がかけられる。
「あ……っ」
ゆっくりと生地が捲り上げられ、空気に晒された肌が微かに震える。
露わになったハルの胸元は、本人が言った通り、まさに「やばい」状態だった。
白く柔らかな肌は、内側から溢れんばかりの熱を蓄えてパンパンに張り、青い血管がうっすらと浮き出ている。
その頂に鎮座する乳頭は、パピーたちに吸われ続けた名残で赤く色づき、服の摩擦さえ反応するほど、硬く尖っていた。
「大変だ。こんなになるまで、我慢してたの?」
ユキの喉が、ぐっと鳴る。
「だって、お医者さんに、断乳するから少しずつ回数減らせって言われたし……っ、ユキ……あんまり、見ないでくれ」
ハルは腕で隠そうとしたが、その前にユキの逞しい腕が、熱を持ったハルの身体を優しく、けれど抗えない力で抱き寄せた。
「絞るだけじゃ、足りないだろ」
ユキの低い声が、ハルの耳朶を熱く打つ。
「俺が全部、吸い取ってあげるから……ハルは、力を抜いてて」
ユキの顔が近づき、その熱い唇が、張り詰めた乳房の端にそっと触れる。それだけで、ハルの背中に電流のような刺激が走った。
「んぅ……っ、ユキ……っ」
大きな掌が、熱を帯びた膨らみを下から支えるように包み込む。
指先が優しく圧を加えると、行き場を失っていた熱が中心へと集まり、ハルの鼻から「はぁ……っ」と甘い吐息が漏れた。
やがて、ユキの口内が、最も熱く尖った部分を深く含み取った。
「あっ! ……あぁっ、ん……!」
パピーたちの小さくて拙い吸い付きとは違う、力強く、容赦のないアルファの吸引。
溜まっていた母乳が、一気にユキの口の中へと引き出されていく。
内側からの圧迫が解ける快感と、神経の集まる先端を貪欲に愛でられる快楽が混ざり合い、ハルの脳内は真っ白に染まった。
「あ……ふ、あ……ユキ、そんなに……っ!」
ユキがちうちうと乳を吸うと、その刺激に反応して、吸われていない反対側の乳も甘い雫をほろほろと溢した。
「あ、やば、服が汚れる……!」
それを聞いたユキは、すかさず反対の乳房を咥えて、漏れ出る乳を吸い取った。
「んぁッ……!」
ビリビリとするような甘い刺激に、ハルは思わず声を上げる。
パピーに与えるべき乳を出しながら、秘部を濡らし、ペニスが立ち上がってしまう浅ましい自分。
ユキは休むことなく、もう片方の胸をもどかしそうに揉み解しながら、溢れる「熱」を飲み下していく。
ハルの身体は、番に全てを捧げる喜びに応えるように、さらに深く、甘い香りを放ち始めた。
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