93 / 94
93.行き場を失った雫 **
午後の公務を終えたあと、ハルは夕方の授乳のために、足早にパピーたちの元へ急いだ。
しかし、ベビールームをそっと覗き込んだハルは、思わず声を呑んだ。
五匹のパピーウルフたちは、重なるようにしてすやすやと寝息を立てていた。
(か、かわいい……ッ!!)
「皆様、遊び疲れたようで」
乳母の一人がハルに気付いて、小声で囁いた。
「夕方の離乳食をたくさん召し上がって、そのあとウトウトしたと思ったら……!」
「本当に愛らしい若様たちですこと…!」
乳母たちは、パピーたちの成長が可愛くてたまらないといった様子だ。
起こしましょうか、という申し出に、ハルは「いい、ぐっすり寝てるし」と首を振った。
ルーティン通りなら、城にいる間は、乳母たちが寝かしつけや夜間の見守りもやってくれる手筈になっている。
「今夜は公務でお疲れでしょうし、若様たちは夜間も我々がお預かりいたしましょう。それでよろしいですか?」
「……わかりました。では、今夜はお願いします」
***
城での夕食を終え、離れの自室へ戻った頃だった。
(……あ、しまった、張ってきた……)
予期せぬお昼寝により夕刻の授乳を逃したせいで、ハルの胸はたんまりと乳を蓄えていた。
(でも、断乳に向けて頻度を減らせって言われたんだし、これくらいは我慢しないと……)
行き場を失った母乳が胸の中で凝縮され、皮膚を内側から押し広げる。
服の生地がツンと尖ったままの乳頭に擦れ、痺れるような刺激が走った。
(母乳か溜まって、辛い…!)
あの子たちは今、乳母からミルクを貰って、ぐっすりも眠っている頃だろう。
けれどハルの身体は、子供たちが吸いに来ないことに戸惑い、抗議するようにドクドクと脈打っていた。
一滴、また一滴と母乳が滲み出し、寝ているうちに服やベッドを汚していくのではないかという不安が襲う。
「ハル、大丈夫か?」
ハルが顔を上げると、そこには父親の顔でも、王子の顔でもない、一人のアルファとして自分を見つめるユキの瞳があった。
「……夕方、飲ませられなかったから、おっぱいが溜まってるみたいだ」
ハルは、硬く張り、不自然に膨らんだ胸元を隠すように猫背になっていた。
「おっぱい張ってるの?」
恥じらうハルの手を取って、心配そうにユキが覗きこむ。
「お、おい……あんまり見るなよ」
吸い残された母乳の重みで、胸元はいつもより一回りは大きく、丸みを帯びて膨らんでいる。
その中央では、生地を押し上げるようにして尖った乳頭が二つの小さな突起を作り、隠しようのない自己主張を放っていた。
ハルは、服の上からでもはっきりと分かるその「変化」を直視され、顔を真っ赤に染めた。
赤ちゃんにあげるための神聖な乳を、番にまざまざと観察される。
その羞恥心が、張り詰めた胸の奥をさらにじりじりと熱くさせた。
「うーん、大変そうだね…おっぱい辛い?」
心配と共感から、ユキは大きな獣耳を後ろにぱたんと倒し、整った眉を下げた。
産後すぐから育児に積極的に参加し、自分も哺乳瓶を握ってきたユキは、「飲ませないと乳が張って、伴侶が苦しむ」という図式を誰よりも深く理解していた。
「うん、結構やばい……朝にまた授乳するけど、それまでに絞っておかなきゃ、まずそうだ」
乳で張った胸を手で絞ると、まるで乳牛のようにピューと母乳が噴き出す。これまでも、こどもが吸わなかったときに風呂場や洗面台で自分で絞ることがあったし、ハルは今回もそれで大丈夫だろう、と思っていたのだが…
ハルが困りかねていると、ユキの手がそっと、張り詰めた生地の上からその重さを確かめるように伸びた。
「…"こっち"の方が手っ取り早いんじゃない?」
「え?」
ハルはドキリとした。
夜闇のなかできらりと光る、金色の瞳。
「……俺が手伝ってあげる」
ユキの指先が、ハルの頬を撫でる。
ハルはその意図に気付いてハッとして抗議してが…
「おい…!」
だって、ここは森の中の家じゃない、城だ。
離れた別室には乳母やこどもたちだっているし、深夜の見回りの衛兵だって…
「…大丈夫、俺に任せて」
その言葉は、献身的なパパとしての「手助け」のようでありながら、どこか逃れられない雄の熱を孕んで、静かな寝室に響いた。
***
城の寝室は、外の静寂を吸い込んだようにひっそりとしていた。
ハルのパジャマの裾に、ユキの大きな手がかけられる。
「あ……っ」
ゆっくりと生地が捲り上げられ、空気に晒された肌が微かに震える。
露わになったハルの胸元は、本人が言った通り、まさに「やばい」状態だった。
白く柔らかな肌は、内側から溢れんばかりの熱を蓄えてパンパンに張り、青い血管がうっすらと浮き出ている。
その頂に鎮座する乳頭は、パピーたちに吸われ続けた名残で赤く色づき、服の摩擦さえ反応するほど、硬く尖っていた。
「こんなになるまで、我慢してたの?」
ユキの喉が、ぐっと鳴る。
「だって、お医者さんに、断乳するから少しずつ回数減らせって言われたし……っ、ユキ……あんまり、見んなよ」
ハルは隠そうとしたが、その前にユキの逞しい腕が、熱を持ったハルの身体を優しく、けれど抗えない力で抱き寄せた。
「ハルは、力を抜いてて」
「…っ!」
ユキの顔が近づき、その熱い唇が、張り詰めた乳房の端にそっと触れる。それだけで、ハルの背中に電流のような刺激が走った。
「んぅ……っ、ユキ……っ」
大きな掌が、熱を帯びた膨らみを下から支えるように包み込む。
指先が優しく圧を加えると、ハルの鼻から「はぁ……っ」と甘い吐息が漏れた。
やがて、ユキの唇が、最も熱く尖った部分を深く含み取った。
「あっ! ……あぁっ、ん……!」
ただでさえ、敏感になっているそこを。
パピーたちの小さくて拙い吸い付きとは違う、力強く、容赦のないアルファの吸引。
溜まっていた母乳が、一気にユキの口の中へと引き出されていく。
ごくり、とユキの喉が鳴る。
飲めるほど母乳が出ているのか、という思いと、張り詰めていた乳房が楽になる感覚、敏感なソコを刺激される背徳感で、ハルの下半身がひくひくと反応した。
乳を出すという行為に性的に反応してしまっている自分の浅ましさに、ハルの脳内は真っ白に染まっていく。
「やっぱり甘いね、ハルのおっぱい」
「あ……ふ、あ……ユキ、そんなに……っ!」
ユキがちうちうと乳を吸いながら、器用に反対側の乳首を摘んだ。
「ひぅ…ッ!」
(だめだ、この感覚、久々で…ッ!)
育児と公務に忙殺される日々が続いていて、ここしばらく肌を重ねていなかったせいか…
ハルの身体は、『番』の刺激を待ちかねていたかのように、反応していく。
「あ……ッ、くぅ……!ふぅ……ッ…!」
周りに気取られないように、声を押し殺す。
「あ、あんまり、吸うな…!」
「だって、おっぱい張って辛いんでしょ。ちゃんと出さなきゃ」
「そうだけど、ぁ…ッ、お前の気持ちは、ありがたいんだけど…!」
「だけど?」
「うぅ、ばか…!あんまり言わせんな…!」
きゅ、きゅ、と絞るように乳首を摘まれるたびに、腰が揺れた。
寝巻きを押し上げて、少しずつ固くなっていくハルの下半身。
やがて吸われていない方の乳房も、じんと熱くなり、甘い雫をほろほろと溢した。
温かな母乳が乳房から脇腹を滑り落ち…
「あ、やば、こっちも漏れた……!」
それを聞いたユキは、すかさず反対の乳房を咥えた。
「んぁッ……!」
柔らかく温かな、ユキの長い舌。
硬くなった乳首を刺激しながら、吸われていく…
「んっ!んん…っ!」
ビリビリとするような甘い刺激に、ハルは押し殺した鳴き声をあげる。
そんなハルを愉快そうに見ながら、ユキはわざとちゅぱ、ちゅぱといやらしい水音を立てて母乳を吸い、舐め取っていく。
「お前、やらしいことすんなよ…!」
「だって、こうするとハルが喜ぶから」
「喜んでなぃ…ッ!」
「本当に?ほら、見てて」
ユキが、ハルの乳房へ、ふうと吐息を吹きかける。
唾液と母乳で濡れたそこに息を吹きかけられ、ハルの背筋にぞくぞくしたものが走る。
「あ、う…」
何を、見ていろと?
意図を測りかねているハルの目の前で、ユキは長い舌を出して…
ゆっくりとハルの胸の上へ、その美しい顔を下ろしていく。
乳首に触れるか、触れないかのところで舌を止め…
じっとハルの目を見つめて…
「んん…ッ…!」
舐めてほしい。
触ってほしい。
愛してほしい。
ハルの頭の中が『それ』いっぱいになっていく。
そしてハルは無意識に胸を突き出して、舐めてもらおうと…
ふ、とユキが笑った。
「ね?」
「ッ…意地悪いな、お前…!」
「…ハルこそ、ココ濡らしながら強がってて、可愛い」
「ひゃう…!?」
ユキの指先が、ハルの秘部を捉える。
熱く濡れたソコを、下着ごしに指を突き立てるようにグイ、と押され、ハルはたまらない声をあげた。
「前か後ろ、どっちから触ってほしい?」
ハルの身体は、番に全てを捧げる喜びに応えるように、さらに深く、甘い香りを放ち始めた。
ともだちにシェアしよう!

