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まぁ、古代神から言われたら、お断りする訳もいかない。 滅多にないチャンスを自ら潰す様な真似をしないのが、漆津夜だ。 『是非…宜しくお願いします…』 「よい、返事が聞けて、良かったわ。仕事の件が片付いたら、是非、魔界へ顔を出してみて」 瞳を細め、彼女は、彼に言った。 “グリフォン”を、育てていく中で大切な事かも知れない。 解らない場合の取り扱い説明書付きなのだから、今回、お嬢様は奮発していますわ。 魔界へ招待された時点で、漆津夜の社交界レビューも早そうですわね。 ま、ダンスに関しては…。 お嬢様に任せていれば、問題無い。 「もし、解らなかったら、取り扱い説明書を見れば、扱い方は載っている筈…」 『その辺は、大丈夫!もう、楠野帝邸に着くから、切るね…』 「…解ったわ」 「『快楽の王』に、宜しく」 強調した様に、彼女は言い。 漆津夜からの現状報告を切った。 「ちゃっかりしているわ。楠野帝邸に着きそうだから、切るタイミングが素早いですわ…」 「良い事だと思うわ。“グリフォン”の扱い方も、まずまずだし。結構、話していて、良い次期黄泉の國の王になれるわ」 そう言い、再び、赤ワインを飲む、お嬢様。 確かに、漆津夜なら、良い次期黄泉の國の王に、なれるかも知れない。 それは、母親である神艸の教えがあるから。 彼も、黄泉の國の王として就くまでに、色んな試練を乗り越えている。 だから、誰よりも大変なものも解っているわ。 「古代生物の取り扱い説明書、中々、美味じゃない。自分で作っておきながら自賛するのも可笑しいけど。良い物を作った気がするわ」 「お嬢様お手製の取り扱い説明書、如何なる使い方をするのか、今後、見物ですね…」 「えぇ」 「私も、一杯、お付き合いいたします…」 緊張感が解れたら、お酒を飲みたくなった。 私は、ボトルを取り、グラスへと、注ぐ。甘い香りが鼻から抜けていった。

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