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彼には、少し、早すぎたのかも知れない。
女神が…。
微笑む姿は。
ー…刺激が、強い様だ。
「やっぱり…初よね…」
お嬢様からしたら、漆津夜は初。
それは、反応を見れば、一目瞭然。
「甥っ子には、刺激が強すぎるので、止めて下さい。女性の免疫が無いんです」
「ふふふっ…」
『叔母様、何も、バラさなくっても良いじゃん。社交界レビューしてないから、女性のエスコートを習っていないだけで、習ったら、綺麗に出来るもん』
「その、エスコートを教えていないのが…父君ではありませんか」
何故に…。
漆夜叔父様が、漆津夜に教えていないのか解りません。
十六歳という年齢で、社交界レビューしていても可笑しくない。だけど、彼の父親は、華やいだ場所には連れて行っていないのだから不思議ですわ。
見定めするのを拒否しているのか。
息子には『まだ、早い』と、思っているのか。
どっちにしろ、漆津夜が社交界にレビューしなければ、女性の扱い方は習えない。
「…では、今度、私と踊りましょう」
『えっ』
「こんな年齢が高い女性は、嫌かしら。貴方からしたら、遥かに年上ですものね…」
『いや、滅相も御座いません。まさか、古代神からのお誘いを受けるとは、思ってみなかったので』
珍しい事もあるもんだ。
お嬢様から、ダンスのお誘いとは。
「ふふっ、光栄だわ…」
何だか、楽しそう。
甥っ子は甥っ子で、照れながら微笑む。
お嬢様がダンスする時は、大抵、貸し切り状態の店みたいな感じになるから忘れていましたわ。
ドレスアップして、生花を髪飾りにし、夫であるアルザリ卿から貰ったネックレスを着けて。
左手には、勿論、指輪が嵌められている。
二人で踊る姿が目に浮かぶ。
誰もが一瞬、息を止める。
あれだけは…。
忘れられない。
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