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「そ、それより…楠野帝には、報告でしたよね…」
私、疲れているのかしら。
何で、彼と、彼方の御子を脳内で並べているのかしら不明ですわ。
それは、女顔が二つで、当たり前。彼方の御子は、完全に冥王の血を引いているのだから仕方が無い。
一方、漆津夜は璃羅の家系の血筋だし、漆夜叔父様の血が強い分、隠されている部分がある。
女顔は女顔でも、色気ムンムンな彼方の御子と、妖しげに誘う雰囲気を持ち合わせたな漆津夜じゃ、意味が違ってくるわ。
『報告したら、直ぐに、下界に戻っちゃうよ…』
「彼の場合は『下界が馴染み易い』と」
小さな声音で、お嬢様は言った。
「何も、早く戻らなくっても、黄泉の國で、少し休んで行ったら良いのに…」
『駄目駄目!母上に、怒られてしまいます…。下界で暮らす時の条件なんです。僕が、黄泉の國で寛いでいたら、いけないんです…』
「また、神艸は…息子に何て言う条件を付けて。楠野帝に、報告をさせに行かせるんですか…」
『叔母様が、怒って、どうするんです…』
下界での暮らしを学ばせるのは、大切な事だけど。祖母との時間を過ごさせるのも、私は大切だと思っている。
掟が厳しい分、如何なる判断を下すのは、璃羅だ。
「夢霧、貴女の意見も解るけど。此処は…彼が正解。下界で暮らす中で親子の間に、条件を出したなら、守らなければ」
「ですけど…」
お嬢様は、首を横に振り、私の言葉を止めた。
何か、今回の彼女は、オカシイ。
急に…。
“グリフォン”を、漆津夜に渡したり、現魔王との接点を作ったり。
昔なら、有り得ない程の細かさが、交じったりしている。
それに、さっきの科白…。
彼女なりの何かを見付けている感じで、漆津夜で、試している感じがする。
「それで“グリフォン”だけど…大切に、育てて下さいね」
『はい…』
「きっと、貴方の役に立つ」
『…っ』
妖しく、綺麗な笑みを浮かべたお嬢様の顔を見て、漆津夜は、顔を紅くした。
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