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【番外】同棲

 ――三月の終わり。  俺は采火と共に、大学の最寄りの街へと引っ越した。4LDKのマンションで、キャンパスが変わるまでの二年間、一緒に暮らす事になっている。この都市には、遠園寺財閥の企業もいくつかあるそうだ。  同じ学科なので、俺と采火は、オリエンテーションも何もかも同じスケジュールだ。まず引越しを終えたら、入学式に共に出る事になっている。 「これからが楽しみだな」  引越し作業が一段落したので、俺達は現在引越しそばを食べている。イカの天ぷらを美味しそうに食べながら、采火が頷いた。俺は、心の中ではずっと遠園寺と呼んでいたのだが、最近は、心の中でも采火と呼ぶようになった。なんだか卒業したら、一気に距離が、今まで以上に近づいた気がした結果である。 「大学では外部からの入学生も増えるからな」 「そうだな」  そんなやりとりをし、夜はカレーを作った。  こうして入学式の日を迎えて、俺と采火は、スーツを着て出席した。そして数日後には、大学に向かい、初めてのオリエンテーションに臨んだ。隣の席で並んで受けたので、その後も流れるように一緒に行動し、学生ラウンジへと向かった。  それぞれシラバスを開いて、時間割を考える。 「どの講義を取る?」 「何が良いんだろうな」 「俺の前の代の生徒会長情報だと、楽なのは、コレとコレとコレらしい」  先輩情報を遠園寺がもたらしてくれたので、俺は迷わずメモをした。その日は、サークルの勧誘なども行われていたので、俺と采火もいくつかのビラを貰った。  その後は、履修登録を済ませて、二人で真っ直ぐ帰宅した。使用しているのはバスだ。最初は、遠園寺家の車で登下校するという案も浮上したのだが、俺が断った結果、采火もバス通学をすると言い出したのである。ただ、食材は、遠園寺財閥の企業から届けてもらう事になった。清掃業者もとりあえずは断った。やはり采火はセレブだなぁと、一緒に暮らしていると特に感じる。  ――一緒に暮らし始めて、本日で二週間だ。俺は、夕食の準備をしながら、滑り出しは順調だなと考えていた。ちなみに自炊をするのだが、俺と采火は、日替わりで交互に作ると決めている。ゴミ出し当番や洗濯の当番も決めた。少しずつルールを決めたのも楽しかった。  食後、入浴を済ませてから、寝室にしている部屋に、二人で向かった。それぞれの部屋もあって、そちらにも寝台があるのだが、共通の寝室もあるのである。最後のひと部屋は、共通の勉強部屋兼物置として使っている。ベッドが三つある理由は、一応は、大学生活の中で友達が泊まりにきた場合に備えて――と、してある。だがローションのボトルやゴムの箱が自然と置いてあるから、中に入られたら、すぐに恋人同士の寝室だと分かってしまうだろう。それでも俺は、周囲には、同棲ではなく同居だと、一応告げてある。 「ん……ぁ……」  この日は、采火が俺の乳首を丹念に愛撫した。付き合い始めてから徐々に開発されてしまったようで、俺は現在、胸でも感じるようになってしまった。舐められている乳頭から、ツキンと快楽が体に染み込んでくる。 「ぁ……采火……早くしてくれ」 「もうちょっと」 「ん、ぅ」  俺の口から、鼻を抜けるような甘い声が漏れた。我ながら気恥ずかしくなって、唇を片手で押さえる。膝を立てている俺の間に、采火は体を置いている。 「ぁ、ァ」  一緒に暮らし始めてから、俺達はほぼ毎日、体を重ねている。  采火に挿入された時、俺はそれだけで果ててしまった。飛び散った白液が、采火の腹部を汚した。焦らされていた俺の体で燻っていた熱は、それでもまだ足りないと訴えている。体が炙られているように熱い。 「ん――っ、ぁ、采火」 「もっと俺様の名前を呼んでくれ」 「采火……あ、ああ……あ、あ、もっと」 「っ、煽るな」  俺の言葉に、采火が動きを早めた。激しく打ち付けられて、俺は快楽から涙を浮かべた。全身が熱に絡め取られていき、すぐに再び俺のブツは張り詰めた。采火の腹部に、俺の陰茎が擦れている。 「あ、あ、あ」 「悪ぃ、余裕が無い」  余裕など、俺の方はいつも無い。そんな俺を一際強く貫いて、采火が果てた。同時に俺も放った。  現在――俺は、俺達は、非常に幸せである。  なお、その後、俺と采火はほぼ同じ時間割となり、毎日一緒にバスに乗った。俺は朝が得意なので遅刻は無かった。ただ、バイトを見つけたので、たまに講義はサボっている。采火は采火で、家の仕事の手伝いで、大学を休む日がある。そんな時は、お互いにノートやレジュメを貸しあった。  こうして始まった大学生活も――おそらくは、高等部と同じように、振り返る頃には一瞬で過ぎ去っているのだと思う。だから一日一日が貴重なのかもしれない。実際、采火と過ごす毎日は、俺にとって輝かしい。  ちなみに俺は、家庭教師のバイトを始めた。支倉先輩が近所の大学に通っていて、やはり家庭教師のバイトをしているそうで、勧めてくれたのである。支倉先輩と連絡を取ると、当初采火はあまり良い顔をしなかったのだが――最近青崎が支倉先輩と親しいらしいと知った結果、そうでも無くなった。青崎は俺と采火のもとに遊びに来ているとして、支倉先輩にちょくちょく会いにいくのだ(実際には、俺達の所には顔すら出していない)。  俺は何度か、バイト先での打ち合わせで、「俺、は、ノーマル!」と悶えている支倉先輩を見かけたものである。どうやら青崎は、かなり押している様子だ。  このようにして、大学での日々は流れていった。 (終)

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