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第6話
昼休み、雅臣が食事を終えるのを見計らって、空は声をかけた。
「神くん、今からちょっといい?」
「構わないけど」
「君に、ピアノを聴かせたいんだ」
そういう事なら喜んで、と雅臣は空と共に音楽室へ向かった。
ピアノの前に座った空は、長椅子の隣をぽんぽんと叩いて見せた。
「ここ。隣に座ってくれる?」
「いいよ」
二人並んで、ピアノの前へ腰かけた。
鍵盤の上に、静かに指を置いた空は、それと同じくらい静かに語った。
「せっかく知り合いになれたけど、もうお別れなんだ」
演奏が、始まる。
「なぜ? 転校するのかい?」
「うん……」
迷うような素振りを見せた空だったが、思い切って打ち明け始めた。
「僕の父さん、借金があって。今度返さなかったら、殺されるんだ」
「殺される!?」
「生命保険に入って、死ぬんだ。それで払われるお金で、借金を返すんだ」
だから、と空は演奏を続けながら話す。
「だから、父さんを死なせないために。僕を売ることにしたのさ」
「売る、って」
「オークションに出て、できるだけ高値で買ってもらうんだ。少しでも、借金の足しにするために」
「……」
自分と同じ歳の少年が、父の借金のために身売りする。
あまりに過酷な外の世界に、雅臣は震撼した。
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