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第7話
「借金、いくら?」
「1千万円」
「オークションは、いつ?」
「明後日」
短い間だったけど、ありがとう。
そう、空は締めくくった。
演奏も、そこで終わった。
空は知らずに弾いたのだろうが、ピアノはショパンの『別れの曲』だった。
1千万円。
神一族の嫡男とはいえ、まだ未成年の雅臣がぽんと出せる額ではない。
いつの間にか、空はそっといなくなっていた。
音楽室には、一人雅臣が残されていた。
「小室くん」
声に、そっと出してみた。
その響きは、もはや雅臣にとって忘れがたい、かけがえのないものとして胸に宿っていた。
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