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第21話
神家の専用機で、ひとっ飛び。
秋のドイツを、二人は訪れた。
「すごい、すごい! 外国だ!」
幼い子どものようにはしゃぐ空に、雅臣は微笑んだ。
「まずは、ホテルでくつろごう。今後の予定も話すよ」
「うん!」
身辺警護の人間は付いているが、三歩下がって行動してもらっている。
初めて雅臣と二人きりになれた幸運を、空は喜んだ。
ドキドキする。
ワクワクする。
ああ、今ピアノを弾いたら、すごく楽しく演奏できそう!
「空くんのために、特別な部屋を用意したよ」
「ピアノだ~!」
完全防音の部屋で、空は心ゆくまでピアノを弾いた。
「いい感じ。空くんのオリジナリティが出てるよ」
「ホント!?」
「これなら、最終日の演奏会も期待できそうだ」
「演奏会。誰の?」
「空くんだよ。君はこのドイツで、華々しくデビューを飾るんだ!」
「う、嘘ッ!」
途端に萎れてしまった、空の心だ。
「演奏会、って大勢の人の前で弾くんだろ? やったこと、ないよ」
大丈夫。自信を持って。
そんな雅臣の声も、慰めにしか聞こえない。
「まぁ、第一はこの旅行を楽しむことだから。失敗もオーライ、くらいの気持ちでいなよ」
「他人事だと思って~」
空は、ぷぅと頬を膨らませた。
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