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第一章:鬼狩りαはΩになる(5)
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柔らかなものに包まれているような感覚。ただ下半身が内側から何だか気持ち悪く、呻きそうになる。しかし、ふわりと体が何かに支えられているのに、アラタはまだ目を閉じていた。心地よく体が沈む。そして、それに体をしっかりと支えられるような感触……。
(なんだ……ああ、自宅のベッド……)
いつもの匂いに自分が馴染んでいくようだ。今日は疲れたな……とまるでさっき見たことが夢だったかのような不思議な感じであった。どこか脳は痺れているような感覚で、なぜだか現実感がない。
ゆっくりとネクタイを緩め、シャツのボタンを外してその窮屈さを解いていく。ベッドが重みに揺れた気がしたが、よく分からない。
体をマッサージされているような、そんな感触も柔らかで現実味がないものだった。首元にかかる暖かな風?息?何が……と思うと、腕が空気に触れ、さっき鬼に掴まれた箇所が上に上げられたような気がした。そこにぬるりとした感触が……
「!?な、何をしてるんですか!?」
「あ。起きましたぁ?」
相手の舌の感触にハッとして飛び起きると、そこは予想通り自宅の寝室であった。
広めのダブルベッドの上に男が二人。それもどちらも180-190はある大男だ。流石にベッドが重そうに軋むが、それどころではない。アラタは状況に一瞬混乱し、思わずヘッドボード側に後ずさった。けれど、宙は別に気にするでもなく、腕の怪我の治療っス、とアラタの二の腕を指差す。
「鬼の爪の傷はまずいっスよ。特にさっきの奴は……まあ、説明が面倒なんですけど、タイプ的に鬼の血が入っちまって鬼化の恐れもある。さっさと治療しましょう」
「!?」
「アラタさんも見たことあるんでしょ。鬼化した人間」
「っ……!」
どうして元相方のことを知っている……そうは思ったが、アラタはぐっと言葉を飲み込んだ。鬼の発生とその遺伝や繁殖についてはまだまだ研究が進んでいない。ただ、確かにアラタの元の相方は鬼に襲われた傷がきっかけとなって暴走し、鬼へとその姿を変えてしまったことがある。
まだ思い出したくない過去に、アラタの体がぶるりと震えた。そして、目の前の宙の瞳を見つめる。その目は先ほど見た鬼の目ではなく、両目とも元の薄い紫色へと戻っていた。それにホッとしているのは本音だ。
彼のことはまだ分からない、けれど……鬼について自分より詳しそうではある。悔しい限りだが、元の生まれも違うのだ。仕方がないことだろう。それに……
(あの姿……。夢でなければ、あれは一体、どういうことだ……?)
尽きない疑問はあるが、まずは自分の体のことだ。アラタは冷静になるよう努めつつ、宙に詳細を尋ねた。
「研究所の方に連絡した方がいいでしょうか?」
「それでもいいっすけど……あそこの研究主任にアラタさんが解剖されるかも知んないっすよ?あの人、割とサイコなんでしょ?」
斎藤主任のことを知っているのか……と自分もこの前話した研究所の人間を思い出す。確かに、あの相手には薬を盛られて色々調べられかねない。
どこかまだ熱に浮かされたような頭で、あまり思考がよく回らなかった。けれど、この男に任せても良いのだろうか……サイコパス研究者と得体の知れぬ新人(しかも鬼化したっぽい)――なんとも究極の二択な気がする、とアラタは頭を抱えそうになった。
宙はそんなアラタの悩みに気づいたのか、何もしませんって、とパッと両手を離して状況の説明をする。
「おいおい話しますけど、まあ、俺の体はああいう感じなんスよ。簡単に言うと鬼の血が混じってる状態。うちの身内も野村部長も知ってます。この前言った鼻の良さとかもそれ」
「……はあ」
「まあ、相棒のアンタにはいつ見られてもいいと思ってたんスけど、先に説明しとくべきっすよねーすんませんっした!」
「いえ、説明されても俄かには信じ難いので、結果見た方が理解が早くてよかったような気がします……そういうことにしておきましょう……」
思わず本音を漏らすと、お、と宙はその反応を意外に思ったようで、ニカッと笑った。
「で。治療なんスけど、俺の方でできます。なので、患部を見せてください」
「はあ……」
言われた通りにシャツを肌蹴て、強く掴まれた左腕の方を出す。両腕出してください、確認します、と上のシャツを脱ぎさると、傷の深い浅いはあるものの、両の二の腕と胸の辺りに爪の跡が残っていた。まずは、とぐっと右腕を持ち上げられる。
「??」
「俺の体、ちょーっと特殊なんで。俺の体液なら」
「た、体液……!?」
相手から飛び出た言葉にギョッと驚く間も無く、べろっとそこを舐められる。その感触に思わず腕を引いたが、向こうは舌を出したまま笑っていた。
「舐めるだけ♡唾液が有効です♡」
「っ!!嘘じゃないだろうなッ!?」
思わずきつく咎めると、宙はケラケラと声をあげて笑った。
「敬語使うアラタさんも好きだけど、余裕ないのもいいっスよね。そそるぅー」
「からかうのもいい加減に……!」
そうは言ったものの、ぐっと体重をかけられてベッドに押し倒される。まだ力がうまく入らない。頭もどこかふわふわしている。体が……なぜか火照っている。そんな中で、自分よりも大きな男に組み敷かれた。その事実に呆然として、アラタは言葉を失ってしまう。
「……まあ、俺に任せるのが得策っスよ♡」
どう考えても胡散臭いその軽薄そうな言葉とウィンク。けれど、なぜだろうか。それに抵抗する気力すら起きずに、彼に身を委ねてしまうのだった。
(信じられない……)
本当にこれで治るのか……?と思っていたが、宙がアラタの腕をペロペロと舐め始めた瞬間、その傷口からかすかに煙のようなものが出て、ゆっくりと傷が癒されていくではないか。
その、まるで魔法か呪いのような光景に、アラタはまだ自分は悪い夢でも見ているのではないかと、我が目を疑った。同僚に体を舐められている……その信じがたい事実から目をそらすため、アラタはボソリと宙に話題を振った。
「……君のことをもう少し詳しく訊いてもいいですか?」
「おっ、アラタさん、俺に興味あるのー?」
「別に君自身に然程興味はありませんが、仕事には役に立ちそうなので」
アラタの返しに、宙はふはっと笑うと、気を悪くした様子もなく、まあ、俺の正体はさっき見たまんまっスよ、と伝えた。
「何代前か知らねーけど、陰陽師やってた俺の祖先と関係持った相手に鬼の血が混じってたみたいなんですよね。通常であればそういう子供は「産まれない」んですけど、隔世遺伝なのか俺が特殊なのか、まあ、ああいう中途半端な状態になっちまってんスよ。一応、京都の人間の間では鬼と区別して鬼神化って話になってますけど」
「……つまり君もよく分からないということですか」
「ぶっちゃけ言うとそうっスねー。でも、まあ、俺は鬼みたいに人に対しての破壊衝動とかはないですし……鬼狩りは実家の方でも見つけ次第やってたから。どうせなら組織に属してた方が、世間様の役に立っていいでしょ。実家の寺継いでのんびりしてもよかったけど、鬼の数は東京が一番多いから」
なるほど、と思えなくもないが、野村が知っていて許可を出したとなれば、研究所にも宙のことは伝わっているはずだ。出自が出自なだけに、流石に研究サンプルにはされないか、とアラタは首をひねった。そして、少し戸惑ったが、もう一つ話を訊いてみる。
「……あの、角を食べるのは……」
「ああ」
あれね、と言いつつ、宙は、うん?と首をひねった。
「俺、殺人衝動や傷害衝動は全く起こらないんですけど、鬼に対してだけ捕食衝動があるんっスよねー興奮を抑えるのに食う、みたいな?」
「!!」
「角を見ると食いたくなる。食うと落ち着く。それだけっスわ」
その理由も、アラタがあっさりとそれを話すこと自体にも驚いたが、つまりは本人もよく分からないことが多い、ということのようだ。まあ、おいおい話を聞いていくかとも思う。
(しかし、こんな相手とバディを組めって……?部長も何を考えて……やはりバディについては再考してもらうべきか……)
右腕と左腕の傷が塞がり、傷自体はそこまで深くないが、胸元に宙の息がかかる。この状態は一体なんなんだ……と思いつつ、その濡れた感触に耐える。
「ん……っ!」
「ふ、色っぽい声ですね♡」
「からかわないで、さっさと……しなさい」
「はぁい♡」
本当にどういう状況なのか。アラタは呆れつつも、その舌の感触にびくりと細かく震えた。腕ならともかく、胸元に同僚の顔があるなんておかしくないか?しかも男なのだから……と思っていると、宙の手がアラタの胸を支えるように動いた。
「?なんですか?」
「いや、アラタさんって結構胸ありますよねー」
「は?」
「鍛えてんなーって。ほら、胸筋って鍛えると、ふわふわおっぱいになるじゃないですか」
「おっぱいってなんて言い方を……普通でしょう……んっ!?」
何を言ってるんだ?と疑問に思うが、宙の舌がアラタの胸の突起をかすめた。思わず声を出したのをふさぐと、向こうがニヤりと笑う。
「……っ、もういいでしょう!やめなさい!」
「えー、まだ、こっちまでちゃんと舐めないと」
「そっちに傷はありませんが?」
そう言って体を起こして、ん?と自分の太腿に擦り付けられている感触に気づく。……いや、まて。待て待て、君、どうしてそうなるんですか、とも言えず、絶句していると、宙が悪びれもせずに笑った。
「いや、俺、鬼やった後、興奮状態になるから、さっき言ったように自分の鬼神化抑えるのに鬼を喰って中和するんスけど、さっきのだと足りなかったのかもー」
ぺろりと舌なめずりする宙に驚き、アラタは少しだけ後ずさる。
「……どういう……意味ですか……?」
「俺って食欲が満たされないと、性欲にいっちゃうタイプなんですよねえ。まあ、アラタさんって俺の好みでもあるしー」
「!?」
何を言っている!?ともっと距離を取ろうとしたが、ぐっとその腕を抑えられる。すごい力だ。自分もかなり力も体力もある方だが、怪我の影響か何か分からないが、まだ力も入りきらず、そして、頭もぼうっとしているうちに押さえ込まれてしまった。
「わ、私はαですが……っ!?」
「α同士はセックスしちゃいけない決まりでもありました?」
「は!?」
今、何を言った、こいつは!?とアラタは信じられないと目を見開いた。しかし、目の前の宙はそんな反応に臆することもなく、むしろ楽しむかのように、まあまあ、と笑っている。
「俺の唾液とか、体の中からも効くんで。痛みも少なくなりますし、気持ちいいですよ?」
「な、なにを……っ!?」
唇が触れる。いや、触れるどころではない。食べられるかのようなキスは、アラタの唇を奪い、そして戸惑うことなく舌が挿し入れられた。
「ん……ぅっ、ふ……っぅ」
頭の端から痺れるような。ふわふわとした感覚に包まれて、つい、そのキスを受け入れてしまう。舌の感触に、うわ、と思ったものの、その滑りも、熱も、なぜか気持ちよくて、口が勝手に開いていく。
「ん……んっぁ……」
「あー……いいっスね。すげーいい感じ」
ふは、と息継ぎのような間はあれど、そのまま舌が絡んでいく。何をしてるんだと自分で思う気持ちもあるが、思考が、理性が溶けていくかのようで体からは力が抜けていく。
(なんだ、この感覚……っ)
途端、ふわりと甘い香りがした。さっきもどこかで思った気がする。甘い……桃の花の香り。桃?どこかでそんな話を聞いたような……けれど、その香りがアラタの鼻の奥をくすぐると、どんどんと頭が痺れて何も考えられなくなっていくのだ。
「ぁ……んっ、ぅ……、ま、まて……っ」
「ん……気持ちよくなってきてくれました?」
「んっ、な……わ、け……」
ないでしょう、という語尾は消え入ってしまう。宙に触れられた先、ベルトだけ緩めたスラックスのその奥は硬く濡れそぼり、その欲望の形をあらわにしていた。宙の熱がそれに擦れて、互いにそれなりに大きなものが熱をもって触れ合う。
宙はペロリと舌を出すと、どかっとアラタの上に跨り直してくる。やめ、と彼の指先の辿る先を睨んでも、腕に力が入らない。さっきの鬼の傷の違和感は消えたのに、自分の体がどこかおかしい。
「ぁ……、待て……やめ……ろっ……!」
「あー……やっべ、素が出てくるのもたまんねえ」
すっとスラックスの前を寛げられ、自分の熱が硬く外に飛び出すのが分かる。あっという間に下着をずらされ、すでに布を濡らしたそれを指でしごかれる。その濡れた感触にアラタは呻いた。
「待て……待て!待て!!いや、そこは……っ!」
「もうここまできたらキツイだけっスよ。ほら、気持ちよく抜くだけですって」
「んっ……ぁ……っ!」
向こうの履いていたジーンズからも同じように濡れた熱が顔を出していた。それを押し付けられて擦りあわされる。宙の大きな手に握り込まれた二本の欲望は、ぬち、ヌチっといやらしい音を部屋に響かせ始めた。
体温よりも熱い芯が擦れあい、その感触に快感が煽られていく。もとよりなぜか力の入らなかった体が、まるで薬でも盛られたかのように敏感に快感の波に追い立てられて、アラタは思わず小さく喘いだ。それに相手が嬉しそうに笑うのが見えて、ますます悔しく思う。けれど……拒めない。
(なんだ、この甘い匂い……くそ……っ)
今まで嗅いだことのない甘く柔らかな香りがアラタの鼻孔の奥をくすぐる。それが脳に伝わり、ますます理性を痺れさせていくかのようだ。熱が擦れ、その濡れた感触が先端を刺激する。足の先が丸まり、絶頂までの痺れに耐えるかのごとく腰が跳ねた。
「先っぽ、好き?すげえ感じてんスね。やっべ、めちゃかわいいじゃん」
「ばっ……か……何、いっ……んっ……ぁ……」
「あー、やばい。マジでたまんねー」
「っ……!」
キスするのに邪魔、と今更眼鏡をずらされる。奥の方まで長い舌が入ってきて、それを押し返そうとしても、まるで絡めているかのようだ。事実、その絡みに口の中を蹂躙され、けれど、その味にすら感じてしまう。そんな自分が信じられない。
「ぁ……ぅうんっ、ぁは……っぁんっ……!」
「うっま……涎まで好みとかヤバいんっスけど」
「っ!?んっ……ぅ」
べろっと唇を舐められて、舌先を引き出される。あ、と口を開くと、二人の間につうっと糸が垂れた。
「君、な、にを………っ」
「気持ちいいことは嫌いですか?」
「ぁ……」
「ふ、腰動いてますよ。えっちぃー♡」
「っ!!」
握り込まれた手に煽られて、どんどん快感が育っていく。最悪、最悪だ、と思いつつも、もう追い立てられた快楽からは逃げきれない。
アラタは宙の手に促されてガクガクと腰を揺らしてしまう。そうして、そのまま宙の手のひらの中に欲望を吐き出した。その汚れの中に宙の白濁もすぐに混じり、二人はともに息を荒くしたまま体を重ねる。
「ぁ、あ……っ!!」
「ん……気持ち、ぃー……っ」
(……最悪……だ……!)
はあっ、はあっと上がる息を必死で整えるも、全くおさまらない。それどころか、まだ体が震えて何かを求めるような……
バカなという思いと、目の前にいる男を求めてしまっている本能と。アラタは自分の体の変化を信じられなかった。
この前、不意に確認されたが、自分は男性でありαでもある。そして、相手も全く同じ。なのに、どうしてこんなに……とそこまで思って、言葉にしては認めてしまうようで思考を止めた。
宙は射精後の息を整え終えると、はあっとアラタの体を抱きしめて、鼻先をぐっと首元へ埋めてきた。
「んっ……ぁ、は、なれろ……っ!」
「アラタさん、すげえいい匂いすんだよなぁ……これでαとか信じらんねえ。スッゲーそそる匂い。Ωでもここまで好きな匂いに当てられたことないのにぃ……やべえ、マジでまた勃ちそ……っ」
「……し、りません……っ」
体がおかしい。それはタクシーの中からずっとそうだった。ずっと熱に浮かされているかのような感覚で、ふわふわとしている。それにずっと腹の奥が重い。アラタの首に鼻をすんすんと擦り付けた宙は、まじたまんねえ、と呟き、鎖骨のあたりに口付けてきた。
「ん……っ、もう……どきなさい……っ」
「ねえ、もっと……しません?」
「……は?」
やりましょうよ、と宙は着ていたカットソーをばさりと脱ぎ去る。自分と同じぐらい、いや、それ以上に鍛え抜かれた体に唖然とするが、さっきの彼の発言を思い出して、何を、とさらに言葉を失った。
けれど、宙の顔が迫ってくる。その美しいアメジストのような瞳がじっとアラタをとらえて離さない。そして、その視線からは逃げられない――。
「っ……や、待て……それは……っ!」
「俺、上手いと思いますよー?ちんこでけーし」
「し、るか……っぁ……!やめっ……」
サイズはさっき知ったが冗談じゃあない。宙がしたいと言っていることの予想がついて、アラタはさあっと顔を青くした。
しかし、アラタの思考とは裏腹に体からはどんどん力が抜けていく。顔は火照り、熱は芯を持ち、息が上がる。どうして自分の体がこうなっているのか分からない。なぜか腰が震えて、スラックスと下着をずらしてくる彼の手にも何の抵抗もできない。息だけが上がり、体が火照る。
どうして、なぜ、こんな男と?そう思うのに、体はそれを拒めない。
「スキンとローションどこスか?まあ、無くてもいいけど」
「あ……!」
べろっと指を舐めた宙の視線に射抜かれる。捕食者のような、目。その視線から逃げられない。彼の長くて太い指先がアラタの体を暴いてくる。後孔に差し込まれた違和感にも抵抗なく、体が溶けていくかのようだ。アラタの戸惑う心とは裏腹に堪えきれない声が甘く漏れる。
「あ………ぅっ、んん、んっ……っ」
「いい具合じゃん。後ろ使ってしてたりしますー?」
「ぁ、ん、なわけ……なぁっ!」
「後ろ初めて?じゃあ、ゆっくりしますね♡」
「ん、ひ……ぅっ!」
指を浅く二本入れられて、待っての言葉も出ずに相手の肩を掴んでしまう。けれど、その指先は抵抗と言うよりは誘っているかのように彼を引き寄せてしまう。どうして、どうして自分の体がこんな……そう思っていると、指先が内側のしこりに触れ、それで前の熱が硬く濡れ始めた。
「ぁ、あ、だめ……んっ……!!ぁ……っ」
「したことないって本当?すっげーすぐ濡れるじゃん。前もすげえ感じてるし」
「っ……!」
屈辱的な言葉と分かっていても、それを否定することもままならない。宙の瞳に少しばかり加虐性が混じり入り、そして、その指を奥まで挿し込まれた時、アラタは初めて味わう快感にビクビクと震えて達した。
「ぁっ、あ、あっ……うんっんんっ!!ぅっ!」
「……え?まじ?」
「な、に……っ?ぁ、ああっ、ぁっっんっっっ!!ぁうああああっ!!」
根元まで入れられた刺激にアラタはビュクビュクっと欲望の残滓を撒き散らした。けれど、その反応に唖然としているのはアラタだけではない。宙の方も呆然として、そして、ゆっくりとその指を引き抜く。それは、まるで女性の愛液にまみれたかのように濡れていた。……ローションも使っていないのに。
「……まじか」
「ぁ……ん……ぅっ……?ん、ヒッ!」
何かを確かめるようにまた指を差し込まれ、その奥を探られる。その感覚に喘ぐ口元を押さえて耐えていると、うわ、と宙が呆然として体を起こした。
「ちょっと相性良すぎちゃったみたいですねぇ、俺たち♡」
「……?」
絶頂に何度も導かれて息も絶え絶えなアラタには、宙の次の言葉を理解することができなかった。
「アラタさん、アンタの体ん中、子宮できてますよ♡」
「……は?」
アラタの体は……なぜかΩに変わっていたのだった。
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