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$8.二人のアルタイル⑤

 「自分あっ、はい!もちろん短冊と書くもの、えっとちょっと待って下さい!すぐ持ってきます!」  「3枚いいかな?僕と郁と彼の分も」  『え、俺も?別にいらない』  「そう言わないでさ。せっかくだし、願い叶うかもよ」  『そんなの意味ある?それに願いなんて無いし、俺は神頼みみたいなの信じないタイプだから』  初人のその言葉にふっと鼻で笑った郁。3人は同時に顔を見ると郁はコホンッと一つ咳をして真顔に戻した。  「確かにお前は神頼みなんてしないか。それは俺も共感出来るが願いがないと言うのは嘘だろう。父親の事もまだー…」  『あああああ!!いや〜短冊なんて小学生ぶりかなーせっかくだから書こうかなあー!夕日俺のも頂戴!!』  「急にどうしたの?さっきまで意味ないとか言ってたじゃん」  そう言った夕日が手にした短冊を奪うように取り郁の顔を見て"言・う・な・バカ!"と口パクで攻撃する初人。少し口元の緩めている郁を見ているとやはり二人のやりとりが目につく聖は黙っていられない。  「へえ、やっぱり郁は彼の事良く分かってるみたいだね」  「またその口ぶりか。いい加減しつこいぞ」   「だって郁の事は子供の頃から知ってるけど 他人に全く興味のない郁のこんな姿なかなか見た事ないから」  「勝手に決めつけるな。他人に興味ない訳ではない、お前に興味ないだけだ」  再び2人の中に火の粉が舞い散る。初人はまたかよ!と関わりたいくない我関(われかん)せずの顔でペンを持って短冊への願いを考え始めた。  「あぁぁ、、郁さん!聖さん!はい、短冊とペンです!郁さんはこちらで、聖さんはあちらの机で書いて下さい!」  必死に2人の間に割って入リ仲裁をする夕日。パーティーの真っ最中で周りにはゲストもたくさんいてこんな状況見せられない。2人を引き離す事に成功すると一先ず大きく息を漏らした。  「ねぇ、キミも書いたら?」  「え!僕もですかっっ?」  「だってたくさん飾った方が華やかでいいでしょ。ほらっ、自分のも持ってきて」  「あ、はい」    聖に言われ4人それぞれ違う色の短冊にペンを走らせ始める。一番に書き終わった初人が興味深く夕日の隣へ行き横から覗き見た。  『えっとナニナニ?施設ー…の子供達が…』  「あっ!ちょっと見ないでってば!」  『いいじゃん別に。あ、ってかその施設ってのは前に話してたやつ?』  「、、あ、うん。そう」  "施設の子供たちが全員家族のように一緒に幸せに暮らせる場所を下さい"と夕日の短冊は空白がないほど、大きく太い字で書かれていた。 そこには強い気持ちと切に願う思いが汲み取れて初人は口を濁しながら聞いてみる。  『あ、その話、、それからどうなった?』  「取り壊しの日程も決まって、子供達が次どこへ行くかそれぞれ相談中なんだ」  『そっか、、それは辛いな』  「でもどうしようもない。俺がお金持ちで権力があれば役に立てたかもしれないけど、あいにく出来損ないの大人だから。僕に出来るのはいっぱい勉強するんだぞ!こんな風になるなよ!って子供達に反面教師で見せる事しか出来ないんだ」  『そんな事無いって。夕日は立派に働いてるし、子供達はみんな夕日のことを大好きだよ』  「だといいけどな!慧、励ましありがとう」    二人がしんみりしている間に、聖と郁も書き終わり、四人同時に笹の葉に短冊をつける。高い位置に付けられた郁の短冊が気になって、背伸びをして首を伸ばし見ている初人が首をかしげた。  『ん?天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)、、何これ?』  「知らないのか。我こそが一番という意味だ」  『いや意味ぐらい知ってるよ。ただそれを何でここに書くかって聞いてるわけ』  「願い事などない。万が一あったとしても他人に(すが)って叶えて貰おうなんて考えが甘い」  『はぁ?やっぱりアンタ、七夕に生まれてくるべきじゃなかったよな、、』  「そうゆうお前はなんて書いた?」  「俺?あ〜俺の願い事はこれだけど」  ドヤ顔で指差した短冊には"1日も早く鬼と離れられますように"と書かれていた。もちろんその意味をすぐに理解して、郁は目を細めて鋭い視線を初人に突きつける。

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