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世界の終わりを君と歩く 2

毎日が流れて行く。 ジムに通い仕事して、アイツと電話して、週末は一緒に過ごすと決めている。 世界は終わる。 それは突然終わる。 それは誰も知らなかったことだ。 それでいい。 オレには毎日が愛しい。 朝走る道で見るものも、サンドバッグを打つ響きも。 仕事で出会う人たちも。 全てが愛しい なんて幸せなんだろう。 アイツに出会う前の、1人拗ねて生きていたころとは全く違う。 アイツと別れて1人死んでいった時とも違う。 最後の日はオレはアイツを抱きしめて。 最後まで離さないでいたい。 終わった先に何があるのかは分からないけれど。 幸せだ。 幸せだ。 そして生きている。 今、オレは生きて愛してここにいる。 仕事終わりに店を出たら、アイツがそこに立っている。 迎えにきたのだ。 どうせもうすぐ世界が終わるから、好きにさせてる。 オレ達は歩いて帰る。 オレ達の家まで。 アイツは最近オレの部屋に住んでいる。 「・・・・・・あなたはもうすぐ死ぬんですか?不治の病か何かですか?」 何でも自分の好きにさせてくれるオレに怯えてアイツが言ったからわらった。 アイツが練習も仕事もサボってても許してるから怖がっているのだ。 オレが死ぬんじゃないかと。 今までそんなの許してこなかったからな。 間違ってはいない。 この世界が不治の病なのだ。 助からないのは全員だ。 「オレといてくれるんだろ?オレがいない世界では【生きない】んだろ?」 オレは言った。 世界が終わりになるのじゃなければ、絶対に言えない言葉だ。 オレのいない世界で生きるなと。 いや、もしかしたら。 「やり直したかったこととがあるか?例えばオレの記憶を無くさなかったら良かったのにとか」 オレは聞く。 今度はこいつが世界を遡ってやり直しをしたいかも、と思って。 「まさか。あなたの記憶を無くしてもあなたが愛してくれたのに?あなたがこの僕を選んでくれたのに?」 アイツは言う。 これでいい、と。 「オレは。世界が終わるとしてもこの世界を愛してるよ。お前がいるからな」 オレは笑った 世界の終わりで、愛しい男と歩きながら。 世界はもう数日で終わる。 でもオレは。 今度はとても幸せだった。 終わり

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