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世界の終わりを君と歩く 1

結局、アイツとやりすぎて、試合までひと月しかなかったのにえらいことになってしまった。 1週間は休むことになり、体重調整とかも大変で。 確実に試合に臨む派のオレとしてはかなりマズイ事態だったが、ヤクザに薬漬けにされて犯されて拉致されていたよりはマシだったと思うのでよしとした。 あれだけ大騒ぎしたのに問題にならなかったのは確実にもみ消されたからだった。 それをしたのは、オレが思っていたよりも大物だったヤクザの方かもしれないし、警察関係にも強いオレの恋人の背後にいる人達かもしれない。 アイツはデカい金を稼ぐので、それはそれなりに色んな力が蠢いているのだ。 本人のしらぬところででも。 まあ、必死で最後の追い上げも、体重の調整も行なって。 試合に漕ぎ着けた。 前の世界の時は華麗に勝ったけれど、今回は無様ではあるけど、なんとか勝った。 まあ、負けなかった、それでいい。 これがオレの人生最後の試合だ。 そして、この後、中々試合が決まらずに、世界の終わりがくる。 それは決まってた。 本当にボクシングは楽しかった。 してて良かった。 殴られ腫れた顔で試合後、応援に来てくれた人達にあいさつしながら思った。 会場にはあのヤクザも来てた。 しれっと座ってた。 周りに来てくれた人達に謝って少しその輪から離れて、オレからヤクザに近づいた。 ヤクザはふつうの顔をしてオレに手を振った。 「酷い試合だったが良かったよ。最後は根性でねじ伏せたな」 ヤクザがわらった。 相変わらず、堅気には見えないけれど、ヤクザには見えない優男ぶりだ。 「あんたの邪魔がなけれぱ1ラウンドKOだった」 オレは事実を述べた。 前の世界ではそうだった。 「・・・あんたやっぱり、奇妙だね。あんたの言葉の端々に、オレは秘密の匂いを嗅いでるよ」 ヤクザはオレを見つめるが、オレの秘密を見つけられるはずもないだろう。 「流石に今回はやりすぎてね、当分あんたに手をだせない。でも諦めたわけじゃない。何年たとうとあんたを手に入れる」 ヤクザは薄く笑ってオレに言ったが、オレは笑ってしまった。 本来ならゾッとするなり、恐怖するなりすべき場面なんだろうけど。 何年たとうと? 半年大人しくしてくれたら十分だ。 サヨナラヤクザ。 お前はこのまんまで死ぬんだよ。 ド腐れヤクザのままでな。 オレは違う。 オレは愛しい男と死ねるから。 「じゃあ、数年後」 オレはとても良い笑顔で手を振った。 ヤクザは変な顔をしてオレを見ていた。 諦めてないだろう。 でも慎重にいくだろう。 それこそ半年以上はかけて。 だからもう、どうでもよかった。 後数ヶ月で。 世界は終わるから。 オレはジムのメンバーや後援会の人達と祝勝会に向かい、試合の後だからオレは飲めないけど、それでもはしゃいで。 それから帰った。 アイツが待つオレの家へと。 試合の後は。 どうしてもしないとおさまらない。 アイツは無理を言って合宿を中断してきているはずだ。 オレとセックスするためだけに。 「ただいま」 そう言って部屋に入るなり抱きすくめられて。 硬くした前をやんわり掴まれて、唸られる。 「こんなにしたまま帰ってきたんですか?」 咎められて その低音が心地よくて。 嫉妬が心地良くて。 「お前が待ってると思ったらさ・・・お前だってこんなにして待ってたわけ?」 アイツのを掴んでやる。 そこはもう臨戦態勢だ。 「あなたが抱けるんだ。当たり前でしょう」 アイツが言う。 オレの服を剥ぎながら。 腫れた顔にキスされ、今日ばかりは許される首筋に歯を立てられる。 試合の後は、何をしても良い、そう決めている。 そうじゃないとオレも鎮められないのだ。 「早く・・・」 せがむ。 なんならいきなり突っ込んで欲しいくらいだ。 「何言ってるんです、オレは3日休みをとってるんです。ゆっくりじっくり、やりましょう」 獣が舌なめずりをしていた。 もう、オレからの命令はない。 命令とかそういうのがなくなったのは、ちょっとヤバイかもと思った。 嫌なことは絶対しないが、嫌じゃなくて、喜んでいるなら絶対にするのがコイツだ。 「させてくれますよね?」 甘えるように言われてしまえば。 許してしまうのはオレなんだし。 「最後は嫌になるまで注いであげますから」 アイツが悪魔みたいにわらった。 じっくり、食い尽くされるのだ。 ここから3日は。 オレは。 恐れながら、期待しながら、愛しくて。 自分からアイツに腕をのばしたのだった。

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