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統合 5

「好きだ。好きだ。僕はこの世界に1人だけってことの意味も知ってる。世界に他の人達がいる意味も。あなたがくれたから。あなたはあなたの記憶と引き換えに僕にそれをくれた。あなたがどれだけ僕を愛しているかも知ってる。僕は確かにあなたを覚えてなくて、あなたが愛した僕じゃない。でも、あなたを愛してる。あなたが世界だ。僕の世界はあなただ」 その言葉はこんなに滑らかに語られたわけではなく、途切れ、呻き、喘ぎながら語られた。 途中泣きわめくオレを宥め、叫ばせ、喰らいながらも。 知り尽くした身体をアイツは貪りつくした。 オレが美味くてたまらないと。 特に1番奥でオレの結腸に先を吸いつかせながら、そこに放つのを喜んだ。 オレの奥深く、どこまでも繋がりたいとねがっていたから。 溶けてしまいたい。 ドロドロになって1つになりたい。 境目がなくなれば、もっとあなたを愛せる。 そんなことを囁かれた。 ロマンチックな言葉とは裏腹に、その行為は激しく、貪る獣のようで。 オレも汚く喘ぐ獣で、アイツがオレのどこにそんなにロマンチックな感情を持てるのかオレには分からなかった。 「また欲しがって・・・やらしいですね」 アイツはオレの奥でグチュグチュ吸いつかせながら、アイツこそいやらしく低音の声で囁く。 ゆっくり執拗に身体の最奥を暴かれて、オレはもう力なく投げ出した手足を痙攣させて、喚くだけだ。 いい 気持ちいい 死ぬ 死ぬぅ オレはみっともなく叫んで。 壊れたちんぽから出せるものは全部出して。 哀願なのか懇願なのか 拒否なのか 求めているのか それさえ分からずに。 ただ、叫ぶ。 アイツは喜ぶ。 もう勃起すらしないオレの壊れたちんぽすら弄り、オレを貫き、突いて、擦り、捲りあげる。 オレの奥深く納めて、腹の上から膨らんだそこを手で扱く。 中から外から擦り上げられて、オレはまた叫び狂う。 「僕がいい?僕がいい?僕が1番いいはずだ」 アイツも怒鳴る。 そうだ、と言う。 そうだと。 そうだから。 「お前だ。オレはお前を探しに来て、お前がオレを捕まえた」 それは言葉に出来なかった。 いやらしく叫び続ける言葉になっただけで。 色んな女とも 男と寝た。 オレを出会ってオレを愛したお前に恋した。 オレしかいない世界のお前を。 そして、オレを忘れてしまったお前を愛してた。 長い間。 そして死ぬ瞬間に後悔した。 世界の終わりから戻ってきて探したお前は。 お前だけがオレを捕まえた。 他の誰でもなく、お前だけがオレを。 忘れた過去を取り戻すのではなく、全ての過去を通って、そして未来から戻ってきたオレをそのまま愛することで。 今のオレを愛してるのは、オレがいた全ての時間を愛することだと? 忘れたとしても今のオレを愛しているのは過去から愛してるのと同じだと? お前の言葉が届く。 お前は知らないがオレは未来も通ってここにいる。 そして、今のお前だけを選ばせた。 お前は未来も過去のオレも全部愛してるんだな。 だって今ここにいるオレはそれを全部通ってきたから。 深く強いストロークを打ち込まれる度に、しならせ、痙攣し、叫ぶ。 それでもそれがオレを殺さないモノであることをオレは知っていた。 「お前が全部持っていけ。オレの過去も未来も・・・お前のモノだ」 オレはそう言ったと思うけど、言えていただろうか。 中をまた満たされる。 それに酔った。 快楽が溶け合うように身体を結びつけるのに、決してこの身体は本当には1つにはならない。 過去は蘇らないし、未来は変わらない。 でもここにいるのは。 ここで繋がっているのは。 オレの。 そして。 愛しいコイツの意志なのだ。 愛する男に抱かれることは最高だった。 この男と終わりまで行けることは最高だった。 オレは泣いた。 嬉しくて。 オレは。 オレは。 お前といるためだけに世界の終わりから戻ってきたんだよ。 そしてそれはたまらなく幸せなことだった。

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