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第1話-7
そこは仄暗い世界ーーーー
狂気と淫欲と禁忌が交ざりあっている、外と遮断された場所。
視界に映し出されるモノは、全て現実だと言うこと。
後戻り出来ないと咄嗟に感じた祢音は、身震いが止まらない。
ガタガタと震えていると、奏が優しく肩を抱く。
それが何かしらの合図なのかは分からないが、体の奥が熱くなるのを感じた。
急な体の変化に対応しきれない状態の祢音に、部屋の中から近付いてくる2つの影。
「君がネオンだっけ?ソウちゃんから聞いてるよ?!人間のΩなんでしょ?俺たちと一緒だね」
燐が楽しそうに話し掛けてくる横で、淕も物珍しい表情で見つめている。
一緒と言うことは、この2人もまた同じように月城家に養子に入り、ここで育ったってことなのかと…そうしたらこの先に待ち受けているのは、目の前にしているようになってしまうのかと絶望感を味わった。
「違うでしょ、燐。祢音は人間だから」
「え?」
人間…?
じゃあ、君たちは何者なの?!と聞き返そうとした時、とてつもない衝撃が体中を襲う。
吐き気のような、腹の中を抉られるような…中心から襲ってくる大きな波に膝を付いてしゃがみ込んでしまう。
口を手で覆い、浅く呼吸を繰り返す。
「祢音、発情期か?」
口にしなくても確信する奏に、祢音は初めてのことでどうして良いか分からず、足元に縋る様に助けを求めた。
「か、な…で、さまぁっ」
不安な目の色と震える唇。
小さい体が更に小さく見え、まるで幼少期の祢音を思い出す。
あの時は、まだ何も知らなかった綺麗な記憶。
これから先の黒く渦巻く時間を、ここで過ごすことをどう思う?
「あぁ、初めてで戸惑ってるのか。っ、それにしても…この匂いはっ…」
「ソウちゃん、ネオン初めてなの?!凄いっ!俺、人間の発情期見るの初めて♪」
燐はまだ発情期が来ていない為、どうなっていくのか楽しみで仕方がない様子だった。
それを隣で見ていた淕が、失礼だぞと言わんばかりに肩を叩く。
「っ…ハァ、くっ…苦しっ…ど、し…て」
「17歳なんて、遅い方だな。それにしても外で発情しなくて良かった。これじゃ普通のα共に犯されまくって精神崩壊と言う可能性さえもあったかもな?」
「へぇー、そんなにフェロモン凄いの?Ω同士じゃあんまり分からないよ?」
燐はクンクンと近くで匂いを嗅いでみても、それほど分からない。
何となく、違うかも?程度だ。
それに対してαには本能だけが先走る獣のような状態にまでしてしまうくらいキツいもの。
通常の人間なら平常心を保つのも辛いほど、性奴隷のフェロモンは危険。
「さぁ、祢音。お前の奥底で眠っている性欲を開放する時間だ」
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