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三、

身を(けが)し、心を怪我して耐え抜いてきた日常を 全て洗い流してくれるのは…他の誰でもない寅松の熱。 「これだけで息を切らして頬を染めて。 本当に可愛い。…仙之助」 「寅松も…余裕のない目、してるぞ。 焦らなくとも、センは逃げも隠れもしない、から…っ」 雄の顔。 腐る程見てきた、嫌悪感を覚えるものではなく 仙之助を求める寅松の、酷く腹を減らした獣の顔だ。 「慣らさなくていいのは…不本意だが、助かるな」 寅松は、俺の寝巻きの裾を捲ると 既にその存在を見せつけているモノを下着越しに柔く握った。 同時に自らも腰紐を解き、はらりと纏っていた着物を畳に広げる。 立派な布団もない上に、カビ臭く狭いこの部屋では 寅松のたった1枚の寝巻きが俺の背中を守る役割を果たし、 そこへ寝転がれば嫌でも腹の奥底が疼くのだ。 寅松の体温、それから匂いを帯びた着物を背に感じて はぁと漏れた吐息はやけに熱っぽく、自覚するほど厭らしい。 何度も異物を受け入れた場所でありながら 確かな愛欲を求めて口を開閉させる秘部が ──寅松の手によって、その目に映る。 「、あっ」 更に大きく股を広げられ、下着のねじれ目が擦れた。 直に秘部に与えられる刺激に、思わず情けない声が漏れる。 俺の反応を良しとした寅松は、ニッと悪い笑みを浮かべ 秘部へと綺麗な顔をよせて。 「その厭らしい声を他の男に何度も聞かせたと思うと…少し、悔しいな」 「ひぁうッ…!」 ふんどしの結び目を解こうともせず、ただ邪魔くさい布を避けて 寅松は、舌を秘部に沿わすと、にゅるにゅると抜き差しを始めた。 月は雲に隠れ、遂に部屋は暗闇に埋もれる。 しかし、そこに感じる熱、素肌で触れ合う寅松の降り注ぐ雨のような寵愛は 月光よりも明らかで、何物にも変えられない確かな形となって俺を包み込む。 あぁ、酔いそうだ。 好きでたまらないと その気持ちだけで陶酔していく。 こんなにも汚れた俺を愛おしがり 共に汚れ、共に足掻く、俺の恋慕う大切な君。 …欲しい。 他の誰でもない、寅松のそれを 早く。 「…はは。そう急かすな」 無意識に、寅松の美しく伸びた髪へ指を絡めていた。

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