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四、

布を押し上げて昂る熱は大袈裟なまでに脈打ち 緩い刺激を繰り返す寅松の手へ自ら擦り付けてしまう。 秘部からようやく唇を離した寅松は 自身の下着に手をかけて 慣れた手つきで布を絆して。 闇夜に映るは大きく反り上がった影。 先ほどまで舌で弄んでいた蕾へと、欲の象徴が吸い寄せられた。 「セン……仙之助。いいか…っ」 「…ぅ、んう……と、ら…っぁ」 強引に押し進められるその圧に、寅松の余裕の無さを垣間見る。 必死に呑み込んでゆくそこは、寅松のモノを一度喰らえばもう離さない。 少しでも大きな声を出せば、ほんのふすま一枚で隔たれた廊下や隣に丸聞こえだというのに。 容赦の無い愛撫に、もう少し危機感を持てと文句の一つでも言ってやりたい所だが 「っ、とらッ!こぇ……が────ッッ」 俺が本当に我慢のきかなくなった時は 寅松の唇に塞がれるので、 怒りは今宵の月の如く、嬌声と共に雲に隠れる。 こうして夜を明かす事も度々あるわけだが、 未だに関係を継続することができているのも ……寅松の、そんな気遣いがあるからだろう。 明日からも地獄の毎日が続くと解っていても このひと時だけ。 寅松と愛し、愛される時間だけが、 俺に生きた心地を感じさせるのであった。 「セン。明日から3日、休みを貰ったんだ」 「…?そうか。 それなら、留守のうちは俺が倍稼がなければな」 背中に響く鼓動に促され、目を閉じる。 姿は見えずとも、その落ち着きのある心拍で 彼が穏やかに微笑んでいると容易に想像がつくからだ。 物寂しさを覚えながらも、大方客からの誘いか何かだろうと悟った俺は 理由を聞くでも、引き留めるでもなく 彼を送り出す言葉を手向けて、深い眠りへと落ちていった。

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