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第2話
どやと言われても激しく困る。
お見事ですねとでも言えばいいのか?
確かにお見事だ。
立派だ。
降参します、平伏します、だからもうやめてくださいと心の中で狂ったように叫び哀願するがどうしてか声が出ない、声帯が強張って喘鳴めいて間延びした息遣いのほかに何も出てこない、悪夢だ、夢なら早く醒めてくれ、どうしてー……
「見事すぎて口が利けんか。あんさんは……可哀想に、縮み上がっとる」
強烈な羞恥が恐怖を上回る。
「はなせ、人呼ぶぞ!」
「で、誰が来るんや?あんさん横領犯やろ、見つかったらまずいんちゃう」
「誰か、助けください!誰かいませんか!こいつをどっかにやってください、麻酔銃で撃って投網で捕獲してください!」
「動物園から逃げた猛獣かい」
もちろん一郎にとってはもっとたちが悪いものだ。
「!?あっ、い、ひぁ」
色気のない声が漏れる。
先走りを潤滑油にくちゃりと糸引くペニスが手の中で擦れて快感を生み出す。
「兜合わせって知っとるか?」
「聞いた、ことない」
「ガキん頃遊びでせんかったか」
「どうや?」
「気持ち、悪い、はなれろ……はなれてくれ、お願いだから……」
下敷きの腕が痺れて感覚をなくしつつある。
恐怖で萎みきったペニスがゲンキンにも半勃ちの状態で汁を流す、自分の体の変化に愕然とする、信じられない思いと信じたくない思いが相半ばで渦巻く。
「勃っとるやん」
「なにかの間違いだ……」
弱弱しく口走り、無意識に首を振る。
そんなはずないと否定したくても目に映る現実は欺きがたい。
「往生際わる」
一郎の兆候を冷ややかに流し見、勝ち誇って嘲弄する。
「こんな状況でさかるなんて、変態ちゃうか」
お互い様だ。
「俺の事さんざんいかれとるおかしいて批判しはったけどあんたかてフツウちゃうわ、チンコしごかれまくって腰振って悦んどるやないか」
固く張ったグロテスクな亀頭でもって亀頭をしごき、熱を持った手のひらで屹立を擦り上げる。
「どうし、て」
嗚咽する。
「あんまりだ」
俺がなにしたっていうんだ?
報われない。
「君になにかしたか?」
「あんさん自身にはなんも恨みないわ。けどまあ、生き方がむかつく」
「あっ、―んぅ、よせ」
「だす?」
縛り上げられた腕が背中と床の間で潰れる、若者が至近で顔をのぞきこむ、必死に顔を背ける、ぐちゃぐちゃと卑猥な水音が耳を苛む、手の中で育ち上がったペニスが二本存在を主張する、爪先で鈴口をほじって上澄みの汁をぬりこめ括れを摘まんで根元から先端へとやすりがける。
「どないしてほしいか言うてみ」
「下着はかせ……ひぐっ、」
中心に血が集まる。
膨れ上がる射精の欲求に先端が熱く疼く。昂ぶった己自身にゴツい指輪を嵌めた男の手が絡む光景はひどく淫靡で、生唾を飲む。
何をやってるんだ、こんなところで。
エレベーターの中だぞ。
人が入ってきたらどうする?
……ああ、とまってるのか。
それなら心配いらない、だしたところで誰も……
「変態」
耳元で囁く声が一郎をうちのめす。
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