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アニマルセラピー⑩

匠のお陰で少し元気になった結翔は、お昼休憩のチャイムが鳴った瞬間、3人へ声を掛けてからお弁当を2つ抱えて屋上へと向かっていた。 匠は笑顔で送り出してくれたけど、やっぱり静は嫌そうな顔をしてて。そんな静を苦笑しながら見た陸に、行ってらっしゃい、と背を押された。 その様子にモヤモヤしたような悲しいようなそんな気持ちが再燃してしまい、なんだか凄く蓮先輩に会いたくなって心なしか駆け足になっていく。 やっと辿り着いた屋上の扉を開けると、フェンスに寄りかかっている蓮先輩を見つけてなんだかホッとした。 「蓮先輩っ!お待たせしましたっ!」 「おー、早いな。んな慌てなくていいんだぞ?」 小走りで蓮先輩の元へ向かう僕を見てククッと笑っていた蓮先輩は僕の顔を見て急に笑いを引っ込めた。 「結翔、なんかあった?大丈夫か?」 「え・・・?」 「なんか笑ってんのに悲しそうってか・・・寂しそうってか・・・?上手く言えねぇけどそんな気がする」 心配そうに眉を顰めた蓮先輩は、驚く僕の顔を腰を屈めて覗き込んだ。 「えっと・・・ちょっと友達と喧嘩?みたいなのしちゃって」 なんで分かるんだろうって驚きつつも正直にそう呟きながら苦笑した。 あれは喧嘩っていうのかな?あんまり人と喧嘩した事ないからよくわかんないんだけど。 「結翔が喧嘩?想像つかねぇな。なんで喧嘩したんだ?」 驚いたようにそう言う蓮先輩は、そっと僕の手を取って昨日ご飯を食べた場所に促しながら話を続けた。 「うーん・・・。友人が心配して言ってくれた事を僕が譲れなかったというか」 さすがに本人に貴方のことで喧嘩しましたとは言えないから、物凄くぼかした物言いになってしまう。 これだけじゃ何言ってるか分かんないよねと眉を下げて言葉を探していると、蓮先輩にひょいと抱え上げられ驚く。 「ひょあうっ!・・・え!?な・・・っ?蓮先輩!?」 驚きのあまり奇声をあげて動揺していると、蓮先輩は僕を縦抱きにしたまま昨日ご飯を食べた日陰に腰を下ろした。 何で僕、また抱えられてるの!? 「理由もよく分かんねぇし、俺は友達と喧嘩した時の仲直りの仕方とかも知らねぇからさ・・・。でも俺、結翔にそんな顔してて欲しくねぇってか、結翔にはいつもみたいに幸せそうにしてて欲しいっつか・・・。」 そう言いながら僕の背中を赤ちゃんにするみたいにトントンとリズム良く優しく叩いてくれる蓮先輩は、なんだかバツの悪そうな顔をしていた。 「っあー・・・。ごめん、上手いこと言えねぇや。・・・昨日は俺が癒してもらったから、今日は俺が癒す番」 人を慰め慣れていないような様子なのに、僕のためにどうにか慰めようとしてくれている事が密着する肌の熱から伝わってくる。その不器用な優しさに、やっぱり蓮先輩は凄く優しい人なんだって再確認して心がホワッと温まった。 やっぱり僕、誰に何言われようと蓮先輩の事が好きなのは変えられないや。 蓮先輩の胸元に赤く染まり上がった顔を埋めて、ありがとうございます・・・と呟いた。

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