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アニマルセラピー⑮
匠が御手洗いに席を立って手持ち無沙汰になった僕は、さっき撮った写真を蓮先輩に送ってみる事にした。
───蓮先輩、固めのプリン好きですか?駅前にあるカフェのプリンがとっても美味しかったので、蓮先輩に伝えたくてつい連絡しちゃいました。
クリームソーダと一緒に撮った写真を添えて、ドキドキしながら送信ボタンを押した。
蓮先輩、読んでくれるかな?なんて思う間も無く既読が付いてすぐピロンと返事が届いて驚く。
まさかこんなに早く返事が来るとは思ってなくて携帯を落としかけた僕は、慌てて携帯をしっかり握りしめて返事を確認した。
『美味そう。今もまだ駅前に居んの?』
おぉ、固めのプリンも蓮先輩のお好みだったみたい。なんだか嬉しいなぁ。
『濃厚で食べ応えもあってとっても美味しかったです!はい、まだお店で友達と話してますっ!』
『そっか。じゃあ帰る時教えてよ』
急いでお返事するとまたすぐにピロンと返信が来る。
蓮先輩とこんな軽快にメッセージのやり取りが出来てるなんて凄い。顔がにやけちゃう。
ふにゃふにゃした顔のまま蓮先輩にわかりましたっ!って返信を送った時、ちょうど匠が戻ってきた。
「あれ?ゆいどうしたの?なんかすっごくニコニコ」
「あのね、蓮先輩もプリン好きだからさっき撮った写真送ってみたんだけど、すぐ返事が来て嬉しくて!帰る時教えてって言われたから、もしかして電話させてもらえるのかもってちょっと期待してみたり・・・なんて」
えへへって笑いながらそう言うと、匠が目をまん丸にして驚く。
「そうなんだ!確かに帰る時に連絡って電話くらいしかないもんね。やっぱりめちゃくちゃ仲良しじゃん!」
なんだか匠の方が嬉しそうに笑ってくれるから2人でえへへって顔を見合わせてニコニコしちゃう。
それからクリームソーダを飲み終えるまで、僕が蓮先輩の話をしたり匠と陸が先週デートしたっていう話を聞いたりして楽しく過ごした。
たくさんお話ししてクリームソーダも空っぽになった頃、そろそろ帰ろっかってなって蓮先輩に今から帰りますってメッセージを送ってからお会計を済ます。
楽しかったねって匠と話しながらカフェを出ると僕の携帯が着信を知らせた。
ハッ!って匠と顔を見合わせつつも、慌てて携帯をポケットから取り出すと画面には蓮先輩の名前が・・・!
やっぱり電話だった!って嬉しくなって思わずにやけちゃう。
そんな僕を見て嬉しそうに笑った匠が、僕の事は気にせずとりあえず出なって言ってくれたからドキドキしながら電話を取ると、ガヤガヤとした音と共に蓮先輩の甘く響くような低い声が聞こえてきた。
『結翔?』
「はいっ!も・・・もしもし!」
『今どこに居んの?』
僕が吃ったのを聞いてハハって笑った蓮先輩に、なんの前触れもなく聞かれた居場所にキョトリとしつつもカフェの名前を告げる。
『あー、あそこか。分かった。結翔、少しだけそのまま待てるか?』
「へ?あ、はい、僕は大丈夫ですけども」
『よし、良い子で待ってろよ』
周りが騒がしかったし・・・蓮先輩が何かしてて手が離せないから、少ししてからまた電話を掛けてくれるつもりとか?なんて考えつつ切れた通話画面を見て目を瞬かせていると、匠もキョトンとして僕を見ていた。
「匠、なんだかよく分からないけど蓮先輩がここでちょっと待ってろって。いつまで待てば良いのか分からないし、ここからじゃ僕達帰る方向も逆だし付き合わせちゃうの申し訳ないから先に帰っても大丈夫だよ」
「そうなの?んー・・・確かに逆方向だけどゆいを1人にしといたら変なのに絡まれちゃいそうだし・・・。僕も一緒に待ってる。どうせ今日はもう予定ないし、ゆいと一緒に居れる時間が増えるんだからラッキーだね」
「こないだ静にも言われたけど、僕変な人に声掛けられた事なんて無いよ?でも匠ともっとお話し出来るのは嬉しいなぁ。本当に良いの?」
「それ、ゆいが気付いて無いだけだと思うんだけど。本当も何も僕が一緒に居たいから一緒に待つのっ!・・・でも田原先輩、何で待つように言ったんだろうね?まさか迎えに来てくれるとか?」
「いやいやまさかぁ!蓮先輩、忙しいだろうしわざわざ僕のお迎えなんかしないよ」
「え〜、そうかなぁ?」
僕が苦笑しているのを見て匠がニヤニヤとし始める。
あ、コレまた揶揄われてるなぁ・・・!
「もぉ!また揶揄ってるでしょう。っていうか匠こそ陸に連絡してみたら?喜んで会いに来てくれるんじゃない?」
「うん、連絡したら飛んできてくれると思うけど今日はゆいの日だから呼ばなーい!」
揶揄う匠にニヤリと笑ってそう言うと、匠があっけらかんとそう言った。
「な、なるほど・・・?」
匠がそう言うなら良いんだけどもってまた苦笑していると、急に匠が鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして僕の腕をペシペシと叩き始めた。
「ゆい、ゆい、本当だった!」
「えぇ?どうしたの?なにが本当?」
そんな匠の様子に困惑していると、突然匠から引き離されるように後ろから手を引かれて誰かに抱き寄せられた。
何が起こったのか咄嗟には理解できずピシリと固まっていると、僕を抱き寄せた人からお昼にたくさん感じた大好きな人の香りがしてもっと驚いた。
───もしかして蓮先輩?本当に?
「蓮先輩、ですか・・・?」
困惑して顔を見上げようとしたけどガッチリとホールドされていて身動きが取れない。
仕方がないから動くのは諦めてそう問いかけると、僕の頭にコツンと顎が軽く乗せられた。
「正解」
その声で蓮先輩だって確信してホッとしたけど、蓮先輩に抱き寄せられてるって所を意識してしまって僕の顔は一気に真っ赤に染まり上がった。
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