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アニマルセラピー⑭

「それでそれで?今日もぽやぽやした顔で戻ってきたけどどうだったの?楽しかった?」 駅前のお店に入るまで聞くの我慢する〜って言っていた匠に注文を終えてすぐニコニコしながら問いかけられて、反射で今日の蓮先輩との事を思い出して顔がじわじわと熱くなる。 「ゆい顔真っ赤!なになに、どうしたの?」 僕の顔を見て驚いたように目をまん丸に見開いた匠から顔を隠すように両手で顔を覆いながらボソボソと小さな声で答えた。 「・・・・・・僕がね、静と喧嘩して落ち込んでたのに顔合わせた瞬間気付かれてね、えっと、慰めてくれたっていうか・・・。僕ちゃんと笑えてた筈なのに気付いてくれたのがなんだか嬉しくて。慰め慣れてないっていうか、不器用な感じだったんだけどそれがまたなんだかきゅんってしちゃったっていうか。やっぱり僕、蓮先輩の事大好きだなって」 思い返してしまったのは抱き締められてキスをされた事だったけど、なんだかコレは誰にも言いたくなくて。 僕のファーストキスは、大好きな人と。この思い出は僕の中で大事に大事に宝物にするんだ。 だから僕は咄嗟にもう1つの嬉しかった事を口に出した。 顔を真っ赤にして蓮先輩の事を話す、そんな僕を見た匠はそっかぁ、ってなんだか嬉しそうに笑った。 「田原先輩、意外とやるねぇ。そういう些細な変化とか見逃さないって事はゆいの事ちゃんと見てるって事だし、大事にしてもらえてるんだね・・・なんだか僕、安心しちゃった!」 「そう、かなぁ・・・?そうだったら良いなぁ」 「そうだよっ!先輩と恋人になるのも近いかもよ?」 ニヤリ、と揶揄うように笑う匠に思わずへにゃりと眉を下げて笑う。 「もぉ、揶揄わないで〜っ!」 ───蓮先輩が僕の事構ってくれるのは、ペット枠だから。恋人枠じゃないのは分かってる。でも今はただ蓮先輩の傍に居られるならそれでもいいって思うから。 そんな事を考えながらも笑みを浮かべて匠と話していると、注文していた固めのプリンとクリームソーダが2つずつ運ばれてきた。 可愛いグラス型の容器にプリンが乗っており、その上から少し多めにかけられたカラメルが流れている。カラメルの上には生クリームとさくらんぼが乗っていた。 クリームソーダにもさくらんぼが乗っているから横に並べるとなんだかお揃いみたいで可愛いな、なんて思って携帯でパシャリと写真を撮った。 後で蓮先輩に送ってみよう。 その後他愛もない話をしながらプリンを食べ進めてたんだけど、僕は何気に気になっていた事を聞いてみる事にした。 「そういえばお昼大丈夫だった?静、僕が出て行く時凄い顔してたけど・・・」 「あー、大丈夫大丈夫!ゆいは明日からも気にせず田原先輩との楽しんで」 「ランチデートって・・・もぉ〜っ!」 ✱✱✱ さり気なく話を逸らされた事に気付かずまた顔を真っ赤にした結翔を見て匠はそっと息を吐いた。 お昼の静は不機嫌で正直面倒だったのだ。 僕はこういうの向いてないって再認識したから陸に丸投げして黙々と食べてたんだけど、でもでも言い続ける静にだんだんと腹が立って。 ゆいが他の人の恋人になるのが嫌ならつべこべ言わずまず自分のアプローチしたら?ゆいが好きな人と過ごしたがるのを責めるのはお門違いだって分かんない?そんな事に労力使わずに自分と過ごしたいって思ってもらえるように、振り向いてもらえるように頑張る方が大事なんじゃないの? なんて思わず淡々と怒ってしまった。 静はそれを聞いて何かを考えるようにピタリと口を閉じ、陸は不機嫌になった僕を甘やかすように構い続けるっていう変な状況でお昼が終わっちゃったんだよね。 明日こそ静の頭が冷えてたらいいなって思う。 田原先輩とくっついてゆいが幸せならそれでいいと思うけど、静が必死にアプローチした結果静に振り向くならそれでもいいと思う。 僕はゆいが幸せなら相手はどっちだっていいんだ。 でもとりあえずあのお昼のなんとも言えない空気がどうにかなりますように、と顔を赤くする結翔に癒されながら心の中でそっと祈った。

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