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夢のような日々①
「じゃあわだかまりも解けた事だし教室行くか。その前に俺珈琲買うけどゆいも何か飲む?」
ひたすら頷いていた僕の頭をクシャクシャに撫でた静は、前に蓮先輩が飲み物を買っていた自動販売機を指差してそう言った。
「うんっ!今日はおにぎり頬張りながら登校したから実は喉からっからなんだよねぇ。何飲もっかなぁ〜!」
ご機嫌でくるりと方向転換して自動販売機を見つめながら、ふと蓮先輩の事を思い出した。
あの時蓮先輩何買ったんだろう?わざわざここの自動販売機に来たってことはここしか無いやつなのかな?今日のお昼にでも聞いてみよう。
「おにぎり頬張りながら来たの?やっぱりゆいは可愛いな。何飲むか決めた?」
「いや可愛くはないでしょ。僕カフェオレ飲む事にした。あまーいの飲みたい気分」
「本当に可愛いのに。これ?」
「ハイハイ。うん、それ。静が先に買っていいよ〜!」
「わかった。じゃあ俺が先に買うな」
そう言ってお金を入れた静は自分の分の珈琲のボタンを押してから、僕が買うって言っていたカフェオレのボタンまで押しちゃった。
何事もなかったかのように普通にはいって渡されたのでありがとって受け取って、静が面倒だから一緒に買ってくれたんだって思った僕はお財布からお金を出して静に渡そうとしたんだけど。
「ん?いらない。ほら、教室行こう」
プシュってプルタブ開けながらそう言い、そのまま渡り廊下を渡っていく静。
「えぇ?僕払うよ?」
慌てて静を追いかけてそう言うと、僕の手から紙パックのカフェオレを抜き取ってストローを挿した静。それをキョトリとしたまま見ているとそのまま僕にカフェオレを渡してくれた。
「仲直りしてくれてありがとうの貢物だから飲んで。ちなみに俺が悪かったんだからゆいは何もしなくて良いからね」
そう言ってまた僕の頭をクシャクシャと撫でた静はいつもみたいに笑ってて。僕は本当に良いのかなぁって思ったけど静がそう言うならってありがとうって受け取る事にした。
静は何もしなくて良いって言うけど、僕だって静が仲直りしてくれて・・・僕がゲイだって知ってもいつも通り接してくれて本当に嬉しかったから今度何か作って来ようって今決めた。静はあんまり甘いの好きじゃないから甘くない系のものが良いよね。何にしようかな?
僕はそんな事を考えつつも2人で飲み物を飲みながら教室に行くと、いつの間にか良い時間になってたみたいで結構みんな登校してて。
「あぁ!ヘタレの静がゆい独り占めしてる!ずるい!おはよう!」
「2人ともおはよう。仲直り出来たんだね。よかった」
もう匠と陸も登校してた。
匠は僕にぎゅうぎゅうって力一杯抱きついて静に揶揄うような視線を向けていて、静はなんかちょっと拗ねてるみたいな・・・ングって感じの顔してる。またみんなで一緒に居られるのが嬉しい僕はご機嫌にニコニコしちゃってて、陸はそんな僕達を優しく見守ってくれている。
伝えるハードルが1番高かった静にも僕の恋愛対象が同性だって事話せたし、陸にもあとでちゃんと話そう。
ひっそりとそう心に決めた僕は匠をぎゅうって抱き締め返して、最高の友達が出来た僕って幸せ者だなぁ・・・なんて噛み締めていた。
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