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凄く甘くて少しだけほろ苦い⑧

 side:五十鈴結翔  他愛もない話をしながら蓮先輩と学校へ登校する。  しかも僕の右手は蓮先輩と繋がったまま。  それがもう凄く幸せで、僕はふわふわに浮かれてた。  だから登校している他の生徒達に2度見されていた事だとか、蓮先輩の蕩けそうな笑みにあんぐりと口を開けて顎が外れそうになっていた人が居ただとか、そういうのはサッパリ気付けなかったんだよね。  1年生と2年生は下駄箱が離れているから一旦離れて靴を履き替えた後、また合流した蓮先輩がいつもみたいに笑顔でサラリと僕の手を握ってくれて、僕はまたぽわぽわしちゃう。  こんなふうに学校でも甘やかして貰えるなんて・・・蓮先輩のお気に入りって本当にすごいや。  なんだか夢見心地っていうのかな?ずーっとぽわぽわしたまま結局教室まで送ってもらっちゃった。  「あー・・・、着いちまったなぁ」  「ですね・・・。蓮先輩と一緒だと何してても一瞬で時間が過ぎちゃいます」  僕の教室の前まで送ってくれた蓮先輩が僕の右手をにぎにぎしている。  なんだか蓮先輩が可愛いよぅ。  まだ時間もあるし・・・もう少しこのままお話ししていてもいいよね?  「あー・・・もう本当可愛い」  そう呟いた蓮先輩がにぎにぎしていた僕の右手をクイっと優しく引っ張った。    「ひゃわっ!」  特に踏ん張っても居なかった僕はそのまま蓮先輩の腕の中にスッポリと収まってしまう。  変な声出ちゃった。恥ずかしいよぉー・・・!  「ちょっとだけ充電、いい?」  そのままぎゅうって僕を抱え込むみたいに抱きしめた蓮先輩が耳元で優しく囁いた少し掠れた声に、羞恥から少しだけ熱くなってしまっていた頬が別の意味で一気に真っ赤に染まる。  充電・・・?僕をぎゅってして蓮先輩が充電出来るの?僕が充電出来るの間違いじゃなくて?  なんて思いつつも、結局僕的には嬉しいだけなので蓮先輩の胸元におでこをくっつけたままコクリと頷いた。  「ありがとー・・・。あー・・・、結翔をこのまま抱えて授業受けたい」  「・・・ふふっ。僕、蓮先輩に抱えられてたら嬉しくって授業どころじゃなくなっちゃいます」  小さな声で唐突にそんな事を言い出す蓮先輩に思わずおでこを胸元にくっつけたまま笑ってしまう。  蓮先輩でもそんな冗談言ったりするんだ。  また知らなかった蓮先輩が知れて、なんだか嬉しいなぁって。  「ははっ!そうか、それは俺も授業どころじゃ無くなりそうだなぁ。じゃあ授業は諦めて昼休憩にたくさん結翔を充電しよう」  「じゃあ僕もお昼休憩に蓮先輩を充電しても良いですか・・・?」  僕、昨日からたくさん甘やかされて欲張りになっちゃってるみたい。  蓮先輩も僕だけのになってくれるって言ってたから我儘言ってもいいかなぁ?って胸元にくっつけてたおでこを離して蓮先輩を見上げると、蕩けるような笑顔を浮かべて「存分にどうぞ」って。  あー、もう幸せっ!ってヘラリと笑うと、僕を抱きしめていた腕を離して頭を優しく撫でてくれた。  僕、蓮先輩に撫でられるの凄く好きだからまた嬉しくなっちゃう。  「昼休みが楽しみだなぁー・・・っとそうだ、なぁ結翔、プリンの写真送ってくれた日に一緒に居た奴ってもう登校してる?ちょっとお願いしたい事あるんだけど」  「へぁ?あ、そうだ・・・ココ教室前だった。えっと、匠ですよね・・・あ、居ますよ!呼びますか?」  そういえばココ、僕の教室の真ん前だった。蓮先輩に構ってもらえると蓮先輩以外の事全部頭からすっぽ抜けちゃう。なんかすんごい見られてて恥ずかしい・・・!  もれなく匠も目をまん丸にして僕らの方を見てたからパッチリと視線が合ってしまった。  コレは後で質問攻めになりそうだなぁ、なんて思いながら振り返って蓮先輩に問いかけるとお願いって言われたから、また匠に視線を戻してチョイチョイって手でおいでおいでってした。  僕?ってまた目をまん丸にしながら自分を指差す匠にウンウンって頷きながらも、蓮先輩が匠にお願い事って何なんだろ?って内心コテリと首を傾げた。  

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