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え、嫌ですけども④
「ただいま」
「ただいま。田原先輩は見つかった?」
虫がくっついてしまっていたらしい所を洗いに行った静と陸が帰ってきた頃にはもう騎馬戦が始まっていた。
みっくん先輩はというと、あの後すぐ派手な髪色のお友達さんに呼ばれて『また来るねぇ〜!』って言い残して行ってしまったので匠と2人で騎馬戦を見ながら応援していたんだ。
「おかえり〜!蓮先輩はね、棒倒しに出るんだって。さっきみっくん先輩が教えてくれたんだ」
おかえり!ってピョンって立ち上がって陸に駆け寄る匠が可愛いなぁって思わずニヤけてしまいながら陸の質問に答えたんだけど、みっくん先輩の名前を出した瞬間静と陸がピタリと止まってしまった。あれれ?
「・・・・・・匠、大丈夫?変な事されてない?」
「ゆい!変態になにもされてないか!?」
・・・・・・2人のみっくん先輩への印象って割と酷いよねぇ。
「僕は大丈夫だよぉ!僕は恋人一筋だからってスッパリ切っといたからね!それよりゆいが抱き付かれてた方が問題!田原先輩に報告案件!」
「そっか、そんな風に言ってくれたの凄く嬉しいなぁ。俺も可愛い恋人一筋だからね。それにしてもゆいに抱き付くなんて許すまじだね。今すぐチクろう」
「ふふっ。大丈夫、もうメッセージ送っておいたから!」
「さすが僕の恋人は出来る子だねぇ」
「でっしょお〜!」
なんて2人が話している間、僕は静に詰められていた。
「だ、だいじょうぶだよ!みっくん先輩、ちょっと変な人だけど悪い人じゃないし!ちょっと目隠しされたくらいっていうか?」
「目隠しされた?それ、触られてるじゃん。万死に値する」
「えーっと・・・?静、何だか物騒な事を言ってらっしゃるけども僕は大丈夫だから、ね?」
「ゆいはもっと危機感を持たないとダメだよ。男なんてみんな狼なんだからな!」
「・・・僕も男なんですけども」
「わかった?」
「うーん?僕も狼って事?がおー?」
静の瞳がなんだか据わっててヤバかったから、ちょっと笑わせようと思って両手を顔の前に持ってきてガオーってポーズしてみたんだけど。
その瞬間何故か静が膝から崩れ落ちてしまった。
「静!?え!?なに、どうしたの?大丈夫!?」
「・・・・・・鼻血出た」
「えぇ?暑いからかな?大丈夫?洗いに行く?付いて行こうか?」
蹲ったままの静に僕がアワアワと声を掛けていると、呆れたような目をした陸が僕の頭をポンポンと撫でてくれて。
「静、とりあえず一旦軽く洗って救護場行くよ。ごめんね匠、ゆい、ちょっと行ってくるから待ってて?」
鮮やかな手付きでポケットからティッシュを取り出し静の鼻に押し当てて、そのまま『すまん・・・』って言っている静をハイハイって言いながら連れて行ってしまった。
口を挟む暇もないくらい迅速な行動・・・!陸、凄いや!
「ねぇねぇゆい、静と何話してたの?陸は2人の方向いてたから見てたみたいだけど、僕背中向けてたからさぁ?」
「ん?んっとね、みっくん先輩はちょっと変な人だけど悪い人じゃないし目隠しされたくらいだから大丈夫だよ〜って言ったら万死に値するとか言い出してね?物騒だよ〜って言ったら男は狼だから危機感を持てって言われたんだけど、僕も男だし?静の目がなんか据わってたから笑わせたくてね、がおーってしたときにちょうど崩れ落ちちゃった。今日は暑いからねぇ、熱中症とか気を付けないとだね」
「え〜、ちょっとそれすっごい可愛いんだけどぉ!彼ジャージの相乗効果で最高に萌える!!ちょ、田原先輩が帰ってきたらそれやってあげなよぉ!絶対に喜ばれるから、ね、決まり!」
んぇ?静の話じゃなかったっけ?って戸惑いながらも、そのままぎゅうって抱きしめられてぐりぐりほっぺ同士を擦り合わせる匠の勢いに負けて思わずコクコクと頷いてしまった。
なんかよく分からないけど、蓮先輩が笑ってくれるかもしれないしやるからには気合を入れてがおーしよう、うん。
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