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え、嫌ですけども⑮

 俺の出場競技、午後からに固まってたから午前中は結翔を構いながらのんびり出来ると思ってたのになぁ。  クソ暑い中そんな事をぼんやり考えながら右から左に聞き流していた開会式がやっと終わって、今は各自テントや競技の集合場所への移動の時間。代打を頼まれた棒倒しの順番的にもう集合場所へ行ってしまった方がいいのは分かっていたんだけど、俺にはそれより大事な使命がある。  ───そう、結翔に俺のジャージを着せておかなければならない。これは最優先事項だ。  蜜樹に絡まれたら面倒だし、ついて来んなって言っても結翔のところまでついてきて嬉々としてちょっかいを出し始める気しかしないから絶対に見つからないようにしなければならない。それが1番高難易度だ。  さりげなく蜜樹の様子を横目で確認すると、知らねぇ小さい男共に囲まれている。これはチャンスだ。アイツはファンサだよぉ〜!とか言って言い寄ってくる奴を邪険にしねぇから今ならバレずに結翔の所に行けそうだな、と心の中でニンマリと笑いながらその場を離れて結翔を探しながらテントの方へ向かった。  同じクラスのやつらのどこに行くの!?とでも言わんばかりの表情を全スルーしながらキョロキョロと視線で結翔を探していると、すでにテントに到着していたらしい結翔はなにやら楽しそうにニコニコしながら話していて。  結翔が楽しそうに笑ってるのは凄く嬉しいのに、それを向けているのがあの静って奴(いけ好かねぇ1年坊主)ってのがなんだかすげぇモヤッとしちまう。  いや、結翔の交友関係に口を出す気はさらさらねぇよ?結翔が大事にしてるもんは俺も大事にしてぇって思うし。だけどなぁ・・・、アイツ、ぜってぇ結翔の事好きじゃん。結翔は俺ので、それだけは譲れねぇからさ、要するに俺の結翔をで見るやつは全員気に食わねぇだけなんだけど。  なんてちょっとくさくさした気持ちで結翔の隣にドサっと腰を下ろしてそのまま結翔の肩に俺のジャージを羽織らせた。コレでちょっとは牽制になんねぇかな?  俺としては全く驚かせるつもりは無かったんだけど、ジャージを羽織らせた際ビクリと肩を震わせた結翔に、やべ、ビビらせちまったか?とちょっと反省してすぐにいつもより殊更優しく聞こえるよう意識しながら結翔に声をかけた。ちゃんと登校の時に結翔が日焼けしやすいタイプだって聞き出しておいたからそれを言い訳にしてジャージ着とけって。その方が結翔も遠慮せずに受け取りやすくなるだろ?  それでも結翔は自分が着ちゃって良いのかな?って顔してちょっと戸惑っていたから、もうとりあえず着させちまったもん勝ちだってジャージの袖に結翔の腕を通しながら、コレ着といたら結翔が俺のだって分かりやすいだろ?って付け加えて。  結翔がなるべくジャージを脱がないように・・・後ろで何とも言えない顔をしてる1年坊主にも結翔が俺のだってちゃんと分かるようにって思いながら念押しをしておくと、頬を真っ赤に染めた結翔が鳴き声みたいな可愛い声で返事をしてくれて。  それだけでさっきまでのちょっとくさくさしたような気持ちは綺麗サッパリ消え失せてしまった。反応もクソ可愛いし俺のジャージ着てる結翔、たまんねぇなぁ。着せといてなんだが脱がせてぇ。いや、大事にするって決めてるからそんな事しねぇけどさ?  一気にご機嫌になった俺は結翔の頭を撫でて水分補給忘れないようにってのもちゃんと約束させてタイムリミットが迫ってきてる集合場所に向かおうとしたんだけど。  結翔にシャツ握りしめながら引き留められて。  頑張ってくださいっ!って、たくさん応援してますっ!なんて健気な事言ってくれてさ。  終いには行ってらっしゃいって可愛い顔して言ってくれて。  ・・・俺の結翔、クッソ可愛くない?もうこれは俺の奥さんって事で良くね?新婚さんみてぇで最高なんだけど。  その後挑んだ棒倒しは結翔の応援と行ってらっしゃいの威力のお陰で絶好調だったからか速攻で終わった。正直に言うと結翔に格好良いって思われたいのはもちろんの事、早く結翔の所に帰りたかったっていうのも全力を出してさっさと終わらせた大きな理由だ。  旗を取った瞬間うるせぇくらいの歓声がして、棒から降りたら暑苦しい味方に囲まれて口々に何かいわれてたけど、俺はそんな事より結翔が見ててくれてたかの方が気になってキョロキョロと結翔を探していると、手が痛くなんねぇか心配になる程思いっきり拍手しながら瞳をキラッキラさせている結翔を見つけて。  ちゃんと見ててくれたんだなって嬉しくなって、思わず結翔って名前を呼んで手を振るみたいに旗を振ると、「蓮先輩格好良いですー!」って結翔の可愛い声が聞こえてきて。(俺の耳は結翔の声だったらどんな状況でも拾える自信があるから空耳じゃなかったはずだ。)  あーもー本当にくっそ可愛い今すぐ抱き締めたい。って顔が緩んだ。  周りの奴らにありえないものを見たような顔をされた気がするけど、まぁそんな事はどうでも良い。俺はさっさとココから退場して結翔と一緒に過ごしたい。  俺は未だ拍手をしてくれている結翔に心を温められながら、結翔の元へ向かうべく足早にその場を離れた。  

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