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え、嫌ですけども㉒

 話が終わったところで蓮先輩と陸に見守られながらちゃんと二人三脚の最後の練習をして。  本番はちょっと緊張しちゃったけど、練習したおかげで1度も転ばずに2位でゴール出来た!  1位になれなくてちょっと残念だけど、最初は転びまくってた事を考えるとすごく成長したよね。  しかも匠とハイタッチして喜んでそのテンションのままテントまで帰ったら、迎えてくれた蓮先輩が満面の笑みを浮かべてたくさん頭撫でてくれて、すっごい褒めてくれたの!  僕、頑張ってよかったぁ・・・!  障害物競争がすぐ後にあったからその時はすぐ蓮先輩とバイバイになっちゃったけど、僕は余韻でずっとニヤニヤしちゃってた。  そんな状態で応援しようとテントの1番前に陣取って蓮先輩の順番を心待ちにしてたんだけど、蓮先輩が本当にすごくて。  障害物競争なのに、障害物本当に機能してます?ってぐらいあっさり抜けて余裕で1位を取っちゃうから、またすっごく興奮しちゃった!  その興奮のまま棒倒しの時みたいに匠に興奮を伝えたかったんだけど、匠も障害物競争に出る予定で隣には居なくて。  もう1人でウズウズして仕方なかったから、蓮先輩が戻ってきた瞬間に棒倒しの時みたいに思いっきり抱きついておめでとうって、すごかった、格好良かったですって、多分興奮しすぎて文脈おかしかっただろうけど一生懸命伝えたんだ。  蓮先輩はそんな僕をまた抱きしめて優しく撫でてくれて、それでやっと僕の興奮は収まってくれたんだ。  蓮先輩は僕の特効薬かもしれません!  でもその後匠もサラッと1位を取って帰ってきて、僕の親友まじすげぇ!!!ってまた興奮しちゃったんだけどね。  次の出場競技は借り人競争だったけど、まだ少し時間があったら有言実行で蓮先輩の隣を陣取って2人で黒団の応援をして。  何故だか僕の肌をすごく心配してくれた蓮先輩に日焼け止めを塗り直しされたりもしちゃった。  自分で塗れますって言ったのに、俺が塗りたいからって結局腕と首元に塗ってもらってしまった。人に塗ってもらうのってなんだかちょっと恥ずかしいよね。  でも首元に日焼け止めを塗ってもらう為に蓮先輩に1番上まで引き上げられてたジャージのジッパーを下ろして首元を出したら、たまたま正面に居た知らない先輩にギョッとした顔で見られたんだけど・・・。  あれ、何だったんだろう?  蓮先輩に塗らせてんじゃねぇよって事かなぁ??でも僕ちゃんと1回断ったし許してほしいなぁ。  そんなこんなもありながら、またジャージのジッパーをキッチリ1番上まで閉められた状態でちょと暑かったけど2人で過ごせてすっごく楽しかった!  体育祭がこんなに楽しかったの初めてだなぁ。蓮先輩のお陰だよね、なんて蓮先輩に感謝したりして。  蓮先輩とそんなふうに楽しく過ごしてたらあっという間に借り人競争の時間になって、僕は蓮先輩と一緒に待機場所に行ったんだ。  順番は僕の方が先で、蓮先輩は最後の方だったから僕の順番が終わったら蓮先輩の勇姿が見れそうだなって、自分の順番がもうすぐな事よりも蓮先輩の格好良いところを見れる方が楽しみでまたニヤニヤしちゃってた。  1人でニヤニヤしてたらヤバいやつだって思われちゃうからちょっと気を付けないとなぁって思ってるんだけど、僕の表情筋は蓮先輩の事になるとゆるゆるになってしまうみたいでなかなか治らないのである。実はちょっと困ってるんだよねぇ。  なんて思考を飛ばしてたらあっという間に僕の順番になってしまって、慌てて周りの人と同じようにクラウチングスタートの体勢を取った。  「位置について、よーい・・・」  ───パンッ!  ピストルの音にちょっとビビりつつもスタート位置から飛び出してお題の紙が置いてある机まで走っていく。  でも僕、足遅いから残ってる紙が1枚しか無くて。  ───どうか変なのが当たりませんように・・・っ!  ドキドキしながら最後の1枚だった紙を引くと、そこには『あなたの親友』って書いてあって。  こんなの1択じゃーん!!!ってニッコニコになってしまった。  本当に変なのじゃなくて良かったぁ。  実際僕より前に紙を引いたはずの生徒が困惑したように紙を見たまま立ち止まってたりしてるしね。僕今日運が良いのかもっ!  そんなふうに上機嫌でお目当ての匠が居るテントの方に駆けていった。  幸い匠は僕の応援をしてくれてて、テントの1番前に居たからテントの近くまでたどり着いた時点で「たくみぃー!一緒に来てぇー!!」って叫んで僕の方まで来てもらったから僕がテントの真前まで行くより時短が出来て5人中3位でゴール出来たんだ!  ゴールした時、ゴール地点に居た放送部の人?にお題と「この子が君の親友で間違い無いですか?」って確認をされたから、「匠が僕の1番大事な親友です!」って胸を張って答えておいた。  息は切れててちょっと格好悪い感じになっちゃってた気がするけど、まぁちゃんと伝わってたはずだからオッケーだよねっ!  放送部の人も優しい目でオッケー出してくれたし、匠は匠ですごく喜んで僕にギュッギュって抱きついて来てくれたし、これはもう学校公認の親友なのでは?  そんなふうに上機嫌で匠とじゃれあいながらテントに帰った。3位も取れたし、僕の競技はこれで終わりだし、ホッと息をついて匠と一緒に蓮先輩の順番を今か今かと待つことにしたんだ。  ───匠と2人で黒団を応援しながら蓮先輩の順番を待っていると、『ヘッドホンを付けている人』『髪を染めている人』『サングラスをしている人』『貴方がこの世で1番可愛いと思っている人』『大喧嘩をした事がある人』とか結構難しそうなお題に困ってる人達が割と居て。  大喧嘩をした事がある人、って判定どうやってするんだろう?なんて疑問を持ちつつも蓮先輩も僕みたいに簡単なお題だったら良いのになぁ、なんて思ってたらいよいよ蓮先輩の順番がやってきて。  なんだか僕もドキドキ。  いつも通り冷静そうな蓮先輩はピストルの音と共に歩いて机に向かっていて。  ・・・・・・走らないの!??なんて驚いていたんだけど、脚が長いからかすぐに机にたどり着いた蓮先輩は残ってる紙をサッと取って。  ───パチリ、と蓮先輩の目と僕の目が合った気がした。 ──────────── ✱ちょこっと裏話 たまたま結翔のジャージの下を見てしまった先輩「何であの子首元にあんなキスマ付いてんの!?は!??」 素朴な感じの結翔とキスマークが結びつかなくてギョッとしてしまった先輩。その後すぐ振り向いた蓮に思いっきり睨まれて真っ青になっていたとか・・・。笑

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