94 / 96

え、嫌ですけども㉓

 あれ?目が合った?って思ったのと同時に蓮先輩がこっちに走ってくる。  黒団のテントにお目当ての人が居たのかな?  でも蓮先輩が走ってくるのをジッと見ていると、ずっと目が合い続けてるような気がして。  もしや僕?ジャージ着てる人、とかがお題なのかな?  なんて考えているうちにあっという間に僕の前まで来た蓮先輩。  「結翔、攫っていい?」  走って来たはずなのに息も切らさず平気そうにそんな事言う蓮先輩が格好良くて。  「いくらでも攫ってくださいー!」  思わず変な事を口走ってしまったんだけども。  そんな僕を見てハハって笑ってくれた蓮先輩は、僕のすぐ傍まで寄ってサラッと僕を抱き上げてしまった。  これは!!お姫様抱っこというやつ!?  「え?え?蓮先輩!?」  「走るからちゃんと掴まってろよ?」  「ふぁいぃ・・・!」  ニンマリ笑った蓮先輩に一瞬見惚れてポカンと口を開けてしまって、思わず言われた通りに首に腕を回してぎゅってしがみついたと同時に蓮先輩が走り出した。  周りは姫抱っこに思い思いの反応を示している。  何故か顔を真っ赤にしてキャーキャー言ってたり、レンー!いいぞー!とか囃し立ててたり、誰だあの男ー!!!って地団駄を踏んでいたり。  他にも借り人をしている生徒は居るのに、僕達に視線は集中していて。  でも僕はそんな事より、僕を抱えて重いはずなのに余裕で走っている蓮先輩が格好良すぎるって方に思考が全振りされていて。  お題は謎だけど至近距離で格好良い蓮先輩を見れるこの状況、役得・・・!だなんてうっとりしてしまっていた。    結局余裕そうに1位でゴールに辿り着いてしまった蓮先輩、本当にすごいっ!  ゴールに着いたし、重いだろうから降りようと思って蓮先輩を見上げたんだけど、ニッコリ笑うだけで全然降ろしてくれなくて。  あれれ?って首を傾げているうちに放送部の人がいそいそと近づいて来ていて確認作業に入ってしまったので降りるタイミングを失ってしまった。  「お姫様抱っこで登場とは思いもしませんでした!お題が気になる所です・・・!何だったのでしょう!」  「ん」  「ありがとうございます!確認させていただきますね!えーっと・・・なになに?世界で1番大事な人・・・?」  「そう、結翔が俺の世界で1番大事な奴だから。もういい?」  ・・・・・・えっと、僕の耳おかしくなった?蓮先輩が僕の事世界で1番大事な人って言った気がする。  うぉー!だとかぎゃー!!だとかの声達をバックにポカンとして蓮先輩を見上げると、ダルそうに放送部の人を見ていた視線を僕に戻して優しく笑んでくれて。  僕、一気に顔が真っ赤になってしまった。  思わず蓮先輩にしがみついていた手を離して両手で顔を隠したんだけど、僕が掴まってなくても安定感抜群で。  もう!蓮先輩ってばどこまで格好いいの!!?  「・・・・・・ご馳走様です!オッケーですのでどうぞおふたりでごゆっくりぃ。あー・・・俺もこんな可愛らしい初心な恋人欲しい・・・」  「結翔は俺のだから駄目」  「あ、はい、それはもう馬に蹴られそうなのでもちろん」  「ならよし。出来ると良いな」  「・・・・・・キミ意外と良い人なんだな」  「はぁ?別にそんな事ねぇだろ」  僕が顔を覆って蓮先輩の事でいっぱいいっぱいになって息も絶え絶えになっているうちに、いつの間にか姫抱っこのままテントまで連れ帰られていて。  姫抱っこの体勢のまま座った蓮先輩。  必然的に膝に乗せられてしまった。  なんかすごく見られているしさすがに恥ずかしいかも、って思って蓮先輩に隣に座りますって言ったんだけど、ニンマリ笑ってダメって言われてしまった。  うぅ・・・、なんかちょっと意地悪。でもそんな所もすきぃ!!!  しばらくされるがままに抱っこされてお茶を飲まされたり頭を撫でてもらったり、色々世話を焼かれていたんだけど、最後の種目であるリレーの集合時間になってしまったので蓮先輩は「ちゃんと見てろよ?」って言って集合場所に行ってしまった。  最初は恥ずかしかったけど、お昼にいつもしてる事だったから途中から普通に受け入れてしまった僕。  蓮先輩と離れてから正気に戻ってまた顔が真っ赤になってしまった。  ニヤニヤした匠にイジられながらリレーを応援して、無事に体育祭は終了しました!  あ、リレーは蓮先輩がサラリとごぼう抜きして黒団1位でした。  体育祭の間、ずーっと格好良かった蓮先輩にドキドキとキュンキュンが止まらなくて。  惚れ直すってこう言うことなんだなって実感しました!  ペット枠だけどあの人僕のなんだって!僕の事特別で大事なんだって!やばくない?ヤバいよね!?  僕、前世でよっぽど良い事したのかもしれない・・・・・・!ありがとう前世の僕!!  なぁんて浮かれてた僕。  翌日、学校で変なのに絡まれる事になってしまうなんて微塵も思っていなかったのである。    

ともだちにシェアしよう!