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Intro...
土煙を立てながら、一台の車が走っていく。赤いその車は随分と長い距離を走ってきたのか、年季の入った古いもののようにも見える。
運転席にはサングラスを掛け、煙草をふかしているタンクトップの男がいる。車から発せられる音、外から聞こえる音、それらを楽しんでいるかのように、ひたすら何もない真っ直ぐの道を走り続ける。その表情は笑っているようにも思える。
すると、遠くの方で何かが動いているのが目に入る。赤茶色ばかりの景色の中で明らかに浮いて見える白。男はそこへ近付けていく。
徐々に速度を落とし、真横で停まろうと試みる。近付くにつれ、その正体がはっきりとしてくる。
この場所がまるで似合わない、身綺麗な青年であった。白いボードを胸の位置で掲げ、そこには黒い文字が書かれている。
サングラスの男はあと少しというところでそれを認識し、自分の真横に彼が並ぶように停車させる。開いている窓から身を乗り出し、青年へ問い掛ける。
「どこか行きたいところは?」
「……次の街へ」
男は顎をくいっと動かし、青年を自らの車へと招く。
無表情のまま青年は助手席へと移動する。ボード以外には、平均的な身体の大きさである彼より少し小さめのリュックしかなかった。その中にはほとんど何も入っていなさそうだ。
それらを前に抱えながら助手席に座り込み、シートベルトを締める。
カチッと音がすると、サングラスの男はアクセルに力を入れて車をゆっくりと発進させていく。
けたたましいエンジン音とともに赤い車はスピードを上げ、何もない道を進んでいくのであった。
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