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 フォークで少し麺を取り、無表情でじっとその姿を見つめる。しょっちゅう食べているのか、慣れた様子で隣にいる男はどんどん口にしていた。人間が口にしても問題はないということは分かった。Tは恐る恐るといった状態で運んでいく。  縮れた麺を静かに口の中に入れていき、ゆっくりと噛んでいく。  すると、驚いたような不思議な表情を浮かべ、その手の動きが止まる。 「お、どうした? 不味くても今日の飯はこれしかないぞ」 「いや、不味くない……。すごく、不思議な感じがするんだ。こんな食べ物は初めてだ……」 「そうか。まぁ、これくらい街へ行けばどこでも売ってるぞ」  Yは短くそう言ったが、Tの耳に届いている気配はなかった。  夢中に麺を口に入れていくその目はやけに輝き、やけに速く食べているその姿はどこか丁寧さが含まれている。  そうしているうちに、TはYとほぼ同時に食べ終えた。  スープまで一滴も残さずに空にしたカップをまとめつつ、鍋に残った湯を、インスタントコーヒーの入ったマグカップに少しずつ淹れていく。

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