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鍋の中のものが沸騰し、カップ麺の蓋を開けて湯を淹れていく。再び閉じてから青年へと手渡す。
「……ありがと」
もう一つ、自分の分も湯を淹れて蓋を閉じると、男は青年の方を向く。
「そういえば、あんたの名前は?」
「名前……」
「偽名でもいいぞ。本名は知られたくないってやつもいるもんだからな。俺はYだ」
「……T」
「よろしく」
Yはカップ麺を差し出し、ニコリとTに微笑む。
一瞬何事かと思ったのか訳が分からないと訴えかけながら見つめる。考えても分からないので、とりあえず同じように前に差し出す。
さらにYの手が伸ばされていき、コツンと軽くカップ麺をぶつける。どうやら乾杯のつもりだったようだ。
Tが意図を察したところで、Yの手は戻っていった。時間も頃合いのようで、ベリベリと蓋を開けていき、付属のフォークで全体をかき混ぜる。
Tも同じようにしていく。慣れていないのか、何度もYの方をちらちらと見ながらなんとか混ぜる。
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