137 / 498
真実の鍵 27
「それで?」
少しの沈黙のあと返ってきた橘からの返事は予想通りというか、俺の言葉をまるで信じてない返事だった。
「……………。」
「………だったら、オレの目を見てちゃんと言えよ。オレが嫌いだって。」
こいつが簡単に信じるはずないのは分かってた。
ある意味、信じてないからこそそんな強気なこと言えるんだ。
なら、俺は心を捨てる。
信じてくれないなら、信じるまで言うまでだ。
「………言ったら、信じてくれんのか?」
そして俺は覚悟を決め、一度ギュッと目を閉じてから顔を上げ橘と視線を合わせた。
「…………え」
「そこまで言うのは気が引けたから、なるべく遠回しに言おうかと思ったんだけど、言って欲しいなら言うよ。」
「………な、ぎさ?」
「俺、おまえのこと嫌い。俺様だし、強引だし、性格悪いし。流されちまったけど、やっぱり男となんてキモい。だから……」
そこまで言って、急に心臓が止まりそうになった。
目の前のこいつが一瞬、泣きそうな顔をしたから。
あんな顔見たことない。
あんなに不安に満ちた顔は……
いつだって無表情で俺の前以外では殆ど笑わないのに。
なのに、俺ごときになんであんな切ない表情するんだよ。
いつもみたいに、俺の嘘を見破って俺様に“渚はオレのモノだ”って言えばいいのに。
言ってくれないから、俺…続けるしかないじゃん。
これ以上こんな橘は正直見ていられなくて、微かに視線を外し最後の言葉を口にする。
「だから、………ホントに迷惑…なんだよ……」
俺はこんなに苦しい思いをしてまで、
一番好きな人を傷付けてしまった、
最低な男だ⋯⋯────
ともだちにシェアしよう!