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アイツのいない世界 37

『やっと思い出したか。』 「それがどーしたんだよ。」 付き合ったばっかであんなこと言われたのは初めてだった……しかも男に。 つーか、付き合ってすぐあんなこと言うこいつの頭はいかれてると思う。 激しくそう思ったのを昨日の事のように覚えてる。 『あれ…………本気だから。』 へ? マジって…… やっぱ、こいつの頭ぜってーいかれてる…… 「じょーだん……」 『だから、本気だって言ってんだろっ!!』 冗談だろって言おうとしたらそっこーで否定された。 「マ……マジで言ってんのかよ?!」 『……あぁ。だから、待ってろ。必ず迎えに行く……』 いきなりそんな事を蒸し返されても、心の準備ってもんがあるじゃんか! それに俺は一言も承諾した覚えもない! 「ちょっ、ちょっと待て!いきなり言われても心の準備が……それにまだ……」 『半年あるだろ。その間、考えて答え出しておけよ。』 え?!えー!? なんだこの展開。 思考がついていかない。 『渚?制服近くにある?』 「あ、あるけど……」 あたふたしてる俺を完全無視で、橘は話を先に先に進めようとする。 『制服の内ポケットの中、見て……』 言われるがまま、携帯を耳に当てたまま、俺はハンガーにかかってる制服に駆け寄った。 そして、ジャケットの内ポケットに手を入れると、俺の手に何かが触れた……

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