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真夜中の密事 42
*
いいって言ってるのに結局橘のうちの爺(廣瀬さん)に促されて車に乗ってしまった。
「……送らなくていいって言ってんのに。」
「ダメだ。ちゃんと送り届けたいんだよ。」
後部座席に二人並んで座りお互いに微妙な距離で会話が続く。
「たく、どんだけ過保護なんだよ。飛行機乗り遅れたって知らねーから。」
「それならそれでいい。」
いいわけねーじゃん!って言おうとしたら、廣瀬さんがすかさず横やりを入れてくる。
「坊っちゃん!何を言ってるんですか!!」
「わかってるよ、うるせーな……」
俺だって、出来ることなら行かないで欲しいって思うのが本音だけど…さすがに口には出来ない。
「でも坊っちゃん、よかったですね。最後にちゃんと渚様にお会いできて。」
「……そうだな」
バックミラー越しの廣瀬さんと目が合うとニコリされ、ちょっと楽しげな声色で廣瀬さんはそのまま話を続けた。
「ここ1週間くらい、ずっと渚様のことご心配されてましたからね。それに毎日、会いたい会いたいと独り言のように言っておられましたし。」
「爺!!余計なこと言うなよ!!」
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