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真夜中の密事 44

「橘って一人っ子?兄弟とかいねーの?」 「いねーよ。」 「だから余計に、奥様は仕事で留守にされる時はご心配されてました。」 「あの人はオレなんか気にしてなかったろ。」 「坊っちゃん……そんなことないですよ?」 いつものことなのか、トーンが変わらない廣瀬さんがそのまま話を続ける。 「………ですから、小さい時から大地様がいつもお誘いに来ては一緒に遊んでおられたんで、大地様が兄弟のようなものですね。……渚様も大地様はご存知でいらっしゃいますよね?」 「あ、はい。知ってます。」 ほっしーがね…… でも今ちょっとだけ胸がちくんとした。 橘の小さい時も知っていれば、唯一の友達だったほっしー…… そうだよ、幼なじみだもんそんぐらい当然だよな。 俺が出会う前なんだからしょーがねーのに、やっぱりちょっとだけヤキモチかも。 「でも、優人坊っちゃんが渚様と出会われてからは見違えるように変わってかれました。」 「え?」 「………爺、それ以上は止めろ。」 俺的にこれからが大事な話だったのに、不機嫌そうな橘の一声で話は遮断されてしまった。 静まり返った車内、相変わらず隣のヤツはそっぽを向いたまま窓から流れる景色を見ている。 エンジン音だけが、静まり返った車内に響き渡って、俺もなんだか居たたまれなくなり、窓の外の流れる景色に視線を移した。

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