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真夜中の密事 45
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「……優人坊っちゃん?もうすぐ渚様のお宅に到着されますよ?」
「………あぁ、わかってる。」
夜中の道路は昼間と違って殆ど車なんて走ってないから、少しでも長く一緒にいたいという気持ちとは裏腹にあっという間にうちに到着してしまった。
そんな状況にまた無意識にため息が漏れる。
本当に、
さよなら……だ
そんな想いを噛み締めていると、俺の右手をそっと包み込む温かい感触。
隣を見ると、橘の左手が俺の右手を包んでいた。
「………た、ちばな?」
「……何も言うな。着くまでこのままでいろ……」
顔は窓に向けたままでそう口にすると、指を絡めながら更にギュッと強く繋がれる。
不意にバックミラー越しに廣瀬さんと目が合うと、ニコリとされ頷かれた。
廣瀬さんはホントに何でもお見通しなんだな……
そんなことを思いながら橘に小さく返事をし、繋いだ手に力を入れ、想いを込めて握り返す。
そして繋いだ手から伝わるように、心の中で何度も呟く……
…………好き、
…………好き、
…………大好き
ホントは、この手をずっと離したくない………
ホントは、どこにも行って欲しくない…………
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