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パンドラの箱 10
「マジかよ………。おまえいい加減にしろよなっ!!」
「俺だって……本気なんだ。相原のこと橘なんかに渡したくない!」
橘が今此処にいたとしたら絶対にぶちギレて向井にとんでもないことをしでかすはずだ。
「向井は俺の親友でそれ以上でもそれ以下でもない。だから、そんなこと言われたって無理だ!それに、橘がそんなことで納得するはずもねーし、余計怒らせるだけだろっ!」
「……いや。“わかった”って言われてそのまま切られたんだけど。」
「え………」
想定外の反応に俺は言葉を失った。
“わかった”=“納得した”
だよな……
一瞬にして頭の中が真っ白になった。
「おい、相原?」
マジで……終わりかもしれない。
あんなに俺に向けられていた独占欲。
それすらないと言うことは完全に呆れられたのだろう。
俺が好きなのは橘なのに……
俺は………
「帰る」
「は?!相原?どうしたんだよ!おいっ!!」
「俺に触るなっ!!!」
肩に掛けられた手を振り払い、荒らげた声は脳裏に響いていく。
脱ぎ散らかしてあった自分の服をかき集め、向井の引き止めにも無言でひたすら服を着た。
ただ今は早く一人になりたくて。
痛む腰も、困惑した向井の表情も、非通知履歴だけが残った携帯も、
……今は全てが滑稽に思えた。
「お、おい!マジで帰るのかよ!?」
「帰る。………もう、ほっといてくれ。」
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