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パンドラの箱 11
向井の引き止めにも大した返事もせず、ありったけの持ち合わせの金をテーブルに置くと部屋を出た。
外は晴天で空を見上げると雲ひとつない青空。
なのに、そんな空の色とは全く反対な俺の真っ黒な心。
…………もう、正直何がなんだか分からない。
自分がいけないのは十分分かってる。だけど、なんだって今日のタイミングで橘は俺に電話をかけてきたんだ。
最後に橘と会ったあの日、“中途半端は嫌いだから渚に電話はしない”と言っていたのに。
その誓いは頑なで、俺が不貞腐れたのを俺は今でも覚えてる。
なのに………なんでなんだ
強い日射しと複雑な頭ん中のせいで、こめかみの辺りがズキズキしてきて一度足を止め歩道の脇にしゃがみこむ。
深くため息を吐き、 ふと携帯の画面を見るとメールが一件届いていた。
………もしかして
淡い期待を抱き受信ボックスを開くと向井からだった。
橘なわけないか……
と、落胆しながら中身を見ると、“ごめん”と一行書き込まれていた。
向井を責めたい気持ちもあるけど、これで親友の仲が崩れるのも嫌だ。
だけど、今は向井にどう接していいか分からない。
そんな気持ちの整理がつかない俺は躊躇いつつもそのまま携帯を閉じた。
「………はぁ……早くうちに帰ろう……」
ここに居ても頭痛は酷くなるばかりだし、とにかく早く頭を休めたい。
そんな重たい頭とダルい身体をなんとか必死に動かし、俺は再び歩き出した。
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