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エピローグ 10

「……渚?どうかしたか?」 「いや、なんか…優人が二人きりがいいって言った意味が分かった気がする。」 「だろ?」 そう言う優人の顔は嬉しそうで、俺もまた幸せが溢れていく。 この人に出逢えてよかった。 この人を好きになってよかった。 幸せと一緒にそう噛み締めていると、名前を呼ばれ再び左手へと視線を落とした。 そして──── 俺の薬指へと銀色に輝くそれをゆっくりと通していく。 「優人?」 「外したくないんだろ?じゃあ、左手に2つ付ければいいよ。」 言う通り、俺の左薬指には指輪が2つ、しっかりとは付けられている。 「……ありがとう。」 「あぁ。じゃあ、俺にも付けて?」 「う…うん。」 そして、俺も優人の左薬指へと同じようにそれを手に取り、付けてあげた。 「……ありがとう、渚。」 そう礼を言われ、また幸せが込み上げてくる。 「……やっと約束を果たせた。」 「うん。」 「待たせて…ごめん。」 「そんな…いいよ。」 言葉に出来ない程の幸福感が余計に胸を切なくさせる。 抱きしめられこんなに近くにいるのに…… 「これからも、変わらず大事にするからな。」 「…うん。」 「……それに、一生涯かけて幸せにするから。」 「…………うん。」 「…そして、 この指輪に誓って────…渚を一生涯かけて愛することを、今日あらためて…誓います。」 「…………優人……」 「……オレを選んでくれて、好きになってくれてありがとう……愛してるよ、渚……」 「………俺も愛してる。この2つの指輪に誓って…一生涯かけて優人を愛することを…今日、あらためて…誓います。」 そして俺たちは、そのまま自然に唇を重ね──── “誓いのキス” をした。 ──── ───コンッコンッ 「……迎えが来ちまったな。」 ドアをノックする音で、俺たちは唇を離すと、名残惜しげに優人が呟いた。 「渚、じゃあ行くか。」 「うん。」 優人が俺の左手を手に取り立ち上がると、俺も立ち上がりドアへと歩き出す。 いよいよだなって手を引かれながら思っていると、ドアの前で優人が振り向き…もう一度抱きしめられた。 クサイ台詞なんて今まで散々言われてきたのに…… それでも、言われる度に…この胸は熱く高鳴る。 嬉しくて、 切なくて、 泣きそうで、 色んな感情と、一つの揺るぎない想い。 好きだけでは片付けられないその感情が、身体中に溢れていく。 きっと俺は、優人が言ってくれたこの言葉を一生忘れないだろう──── 「渚と出逢ったあの頃からオレの想いは変わらないけど……今が一番────愛してるよ……」 *END* 最後までお読みいただきありがとうございました。 アトリエブログの方に今後の予定を記載してます。よろしければそちらも覗いていただけたら幸いです。 結月 みゆ

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