498 / 498
エピローグ 10
「……渚?どうかしたか?」
「いや、なんか…優人が二人きりがいいって言った意味が分かった気がする。」
「だろ?」
そう言う優人の顔は嬉しそうで、俺もまた幸せが溢れていく。
この人に出逢えてよかった。
この人を好きになってよかった。
幸せと一緒にそう噛み締めていると、名前を呼ばれ再び左手へと視線を落とした。
そして────
俺の薬指へと銀色に輝くそれをゆっくりと通していく。
「優人?」
「外したくないんだろ?じゃあ、左手に2つ付ければいいよ。」
言う通り、俺の左薬指には指輪が2つ、しっかりとは付けられている。
「……ありがとう。」
「あぁ。じゃあ、俺にも付けて?」
「う…うん。」
そして、俺も優人の左薬指へと同じようにそれを手に取り、付けてあげた。
「……ありがとう、渚。」
そう礼を言われ、また幸せが込み上げてくる。
「……やっと約束を果たせた。」
「うん。」
「待たせて…ごめん。」
「そんな…いいよ。」
言葉に出来ない程の幸福感が余計に胸を切なくさせる。
抱きしめられこんなに近くにいるのに……
「これからも、変わらず大事にするからな。」
「…うん。」
「……それに、一生涯かけて幸せにするから。」
「…………うん。」
「…そして、
この指輪に誓って────…渚を一生涯かけて愛することを、今日あらためて…誓います。」
「…………優人……」
「……オレを選んでくれて、好きになってくれてありがとう……愛してるよ、渚……」
「………俺も愛してる。この2つの指輪に誓って…一生涯かけて優人を愛することを…今日、あらためて…誓います。」
そして俺たちは、そのまま自然に唇を重ね────
“誓いのキス”
をした。
────
───コンッコンッ
「……迎えが来ちまったな。」
ドアをノックする音で、俺たちは唇を離すと、名残惜しげに優人が呟いた。
「渚、じゃあ行くか。」
「うん。」
優人が俺の左手を手に取り立ち上がると、俺も立ち上がりドアへと歩き出す。
いよいよだなって手を引かれながら思っていると、ドアの前で優人が振り向き…もう一度抱きしめられた。
クサイ台詞なんて今まで散々言われてきたのに……
それでも、言われる度に…この胸は熱く高鳴る。
嬉しくて、
切なくて、
泣きそうで、
色んな感情と、一つの揺るぎない想い。
好きだけでは片付けられないその感情が、身体中に溢れていく。
きっと俺は、優人が言ってくれたこの言葉を一生忘れないだろう────
「渚と出逢ったあの頃からオレの想いは変わらないけど……今が一番────愛してるよ……」
*END*
最後までお読みいただきありがとうございました。
アトリエブログの方に今後の予定を記載してます。よろしければそちらも覗いていただけたら幸いです。
結月 みゆ
ともだちにシェアしよう!