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エピローグ 9
「ちょっ、外さねーと左手に結婚指輪付けてやれねーだろ?」
「……い、いま?!あっち行ってから式でじゃねーの?」
「オレは二人きりでって決めてたから。」
「え……初耳なんだけど。」
「オレが勝手に決めてた。つか、指輪の儀式は誰にも見せたくなかったんだよ。」
そんな……マジかよ。
日本では同性結婚が認められてない。
だから、橘グループが所有してるホテルがある、ベルギーで式を挙げる予定だった。
「じゃあ、べ…ベルギーは?!」
「ちゃんと行くよ。そんな心配しなくてもワッフルはちゃんと食わせてやるから安心しろって。」
「ワッフルは別にいいんだよ!つか、いきなりだとちょっと、心の準備が…」
そんな頭ん中真っ白の俺をよそに、優人は再び指輪に手を伸ばしてきた。
確かに、右手の指輪は婚約指輪のようなもので俺のしかないから、これはもう外してもいいものだ。
でも、俺はこの指輪は思い入れが深すぎて出来ることなら外したくない。
「やっぱり、イヤだ。」
「だけど、それは……」
そんなことは分かってる。
これからは優人とお揃いで作ったこっちの指輪を左手に付けるのが筋だって…ちゃんと頭では分かってるけど。
「分かってるんだけど…なんか、ずっとこれ付けてたから…イヤなんだよ。」
高校卒業してからずっと付けてて、一度も外したことがない指輪だからどうしても外したくなかったんだ。
「………ったく。わかったよ。」
「え?外さなくて…いいの?」
「外すよ、一回な。でもまた付けてやる。」
「どういうこと?」
どういうことか意味が分からない俺は、とりあえず優人の手元に視線を移してみる。
すると、俺の右の薬指にはまる指輪を外し、用意してたもう一つの指輪と重ねて持って俺に見せつけてきた。
「あ…あの…それ、どうすんだよ?」
「もちろん、付ける。じゃあ…左手出して?」
「う…うん……」
そして、俺の左手を握り…その指先へと二人の視線が注がれる。
誰にも邪魔されない、優人が言う通りの二人きりだけの指輪の交換。
みんなに祝福されながらでもない、本当に二人だけ。
だけど……
すごく、すごく…幸せな気持ちが身体中を満たしていく。
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