30 / 214
ほろ酔いサイダー30
宏介は俺の肩を抱きながらぐいぐいとビールを煽っている。
今までの飲み会でもこれぐらい、いやこれ以上飲んでいた。それでもここまで酔うことはなかった。ペースが早かったのだろうか。
そんなことを気にしながら、俺は残っている自分のビールを飲んでいった。
「翔也ー……」
うなだれる宏介の声は、すっかり酔いが回っている声そのものであった。俺はそのまま彼の行動を観察する。
「俺、学生のときから翔也と一緒に出掛けてみたかったんだ。でも、いつも予定合わなかったし、女の子と出掛けてるし」
「そ、それは……。もう過去のことだろ?」
「ま、まぁ……」
「だったら、これから宏介との時間を作ることだってできるだろ。それじゃ駄目か?」
一瞬驚きを見せたと思えば、次にはとても嬉しそうな笑顔になっていた。その変化は、とても愛らしいと表現してもおかしくない。
「じゃ、また来よ」
「……おう。とりあえず、今日はそれで最後な」
「えー。まだ飲める!」
「じゃあ限界が来る前に終わらせる。だいぶ顔赤いし」
ともだちにシェアしよう!