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ほろ酔いサイダー30

 宏介は俺の肩を抱きながらぐいぐいとビールを煽っている。  今までの飲み会でもこれぐらい、いやこれ以上飲んでいた。それでもここまで酔うことはなかった。ペースが早かったのだろうか。  そんなことを気にしながら、俺は残っている自分のビールを飲んでいった。 「翔也ー……」  うなだれる宏介の声は、すっかり酔いが回っている声そのものであった。俺はそのまま彼の行動を観察する。 「俺、学生のときから翔也と一緒に出掛けてみたかったんだ。でも、いつも予定合わなかったし、女の子と出掛けてるし」 「そ、それは……。もう過去のことだろ?」 「ま、まぁ……」 「だったら、これから宏介との時間を作ることだってできるだろ。それじゃ駄目か?」  一瞬驚きを見せたと思えば、次にはとても嬉しそうな笑顔になっていた。その変化は、とても愛らしいと表現してもおかしくない。 「じゃ、また来よ」 「……おう。とりあえず、今日はそれで最後な」 「えー。まだ飲める!」 「じゃあ限界が来る前に終わらせる。だいぶ顔赤いし」

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