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ほろ酔いサイダー29
半分以上なくなった宏介の飲みかけを手にし、ぐいっと煽っていく。何かのフルーツの香りが少し広がって一瞬爽やかな香りが広がるが、すぐにビールの独特の風味に押されてしまう。
俺はそっとジョッキを戻した。
「あはは。やっぱり無理だった? こっちで口直しするといいよ」
「だから俺の……」
すっかり酔っ払っているのか、宏介の顔が少し赤くなっていた。
そういえば、さっきからいつもより上機嫌な気がする。これは酔いが回っているのか。
そんなことを考えながら、ようやく自分が頼んだ赤み掛かったビールを飲む。ジュースを飲んでいるような感覚で果物の甘味が広がり、宏介が頼んでいたものよりも飲みやすい。
ふと、宏介の視線を感じて見てみると、頬杖を付きながら笑みを浮かべて俺のことをじっと見ている。
「……何?」
「いやー。翔也とこうして来れて嬉しいなーって思ってね」
「お前完全に酔ってるだろ」
「んー? そんなことないって、あはは」
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