29 / 214

ほろ酔いサイダー29

 半分以上なくなった宏介の飲みかけを手にし、ぐいっと煽っていく。何かのフルーツの香りが少し広がって一瞬爽やかな香りが広がるが、すぐにビールの独特の風味に押されてしまう。  俺はそっとジョッキを戻した。 「あはは。やっぱり無理だった? こっちで口直しするといいよ」 「だから俺の……」  すっかり酔っ払っているのか、宏介の顔が少し赤くなっていた。  そういえば、さっきからいつもより上機嫌な気がする。これは酔いが回っているのか。  そんなことを考えながら、ようやく自分が頼んだ赤み掛かったビールを飲む。ジュースを飲んでいるような感覚で果物の甘味が広がり、宏介が頼んでいたものよりも飲みやすい。  ふと、宏介の視線を感じて見てみると、頬杖を付きながら笑みを浮かべて俺のことをじっと見ている。 「……何?」 「いやー。翔也とこうして来れて嬉しいなーって思ってね」 「お前完全に酔ってるだろ」 「んー? そんなことないって、あはは」

ともだちにシェアしよう!