47 / 214
プライステイスト5
「コウ、見て! 高いワイン頼んだからね!」
「どうせ無駄遣いになんだろ」
「そんなことないもん!!」
これ以上口で反撃できないと察したタクトは、ラップトップを抱えたまま部屋から飛び出していった。
「はぁ……」
溜め息を付きつつも、タクトの姿を確認しないコウ。その場でゆっくりとワインを飲んでから、読みかけの本に再び手を伸ばす。
内容が頭の中に入っているのか傍から見たら分からないが、淡々とした勢いでどんどんページを捲っていく。
しばらくすると、最後のページに辿り着いたようでその手で本が閉じられた。
その間、グラスの中身は一滴も減らなかった。
意識がようやくそちらへと戻っていったのか、味わう素振りもなくグラスに残っていた中身を一気に飲み干した。それからボトルの中身を注ぎ足したが、数口程度でこれ以上入ることはなかった。
ともだちにシェアしよう!