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プライステイスト32
タクトが目を覚ますと、移動した覚えのないソファの上にタオルケットが掛けられた状態で横たわっていた。
何があったのかを思い出してみる。昨夜はコウと一緒に、自分の作った料理と共に高いワインを開け、自分で買った三種類のワインを味わっていた。
だが、途中から自分が何をしていたのか全く思い出せないでいた。気付けばこのようになっていたのだった。
ふと頭上に温もりを感じたので確かめる。そこには座ったまま寝ているコウがいた。
「コウ」
呼び掛けただけではびくともしなかった。
目の前にある太腿を大きく揺すってみるが、それでも起きる気配はなかった。タクトは身体を起こして両腕をコウに添え、顔を耳元へと近付ける。
「コウ!!」
大きく叫ばれた声に、ビクリと身体を大きく震わせてようやく目を覚ました。
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