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秘密の味1
定期的にあるいつもの集い。お馴染みのメンバーが揃っている。
席の順番は特に決まっていないが、仲のいい人同士はだいたい近い席の印象がある。
これだけ集まると、最初の一杯は必ずピッチャーのビールである。座席の目の前に置かれた小さなグラスに、互いに注いでいく。
「俺は少しでいいや」
そう言ったのは俺の正面に座っている、いつも皆のノリに合わせてかなり飲んでいる先輩の金森 さんだ。今日はやけに大人しい様子で、グラスの半分にも満たない量を入れてもらっていた。
「佐藤、お前も飲むだろ」
「あ、はい」
俺の隣に座っていた山本さんが慣れた手付きで注いでいく。学生時代も含めてお酌していた人なので、いい具合の状態にしてくれる。こんな具合で、会社でも順調らしい。
そうして終えると、今度は俺の反対側に座っている人にも注いでいった。
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