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プライステイスト40

 タクトの顔をぎゅっと掴むと、真剣な表情で彼のことを見つめるコウ。  笑っていた表情が驚きを含み、徐々にふざけた表情がなくなっていく。その心には、何かが急に思い出されていたようだ。  無言の時間がしばらく過ぎていき、次に口を開いたのはコウだった。 「思い出したか? 俺が選んだ最高のワインは、タクトの料理によって完璧になるんだ。お前自身が信じたその腕が……」 「……分かってるよ。コウと一緒なら、誰にも負けない最強になれる。そう信じてるよ」  タクトの腕がコウの顔にそっと伸ばされる。柔らかい頬に触れ、その感触を自らの顔に引き寄せようとする。  それを察して前かがみになるコウ。このまま唇に触れることも容易であると察し、近付けようとした。  だが、あともう少しというところで突然タクトの手が力強く制止して動かせなかった。 「まぁ、コウは見習いだけど、俺なんかただの素人だけどね!!」 「っ……うっせー! いつまでも俺の金で暮らしてんじゃねーよ!!」 「あはははは!! あと数日待っててよ。そうしたら俺も働くもん」 「何回それを繰り返せば気が済むんだ!?」 「コウが独立できたら?」  ずっと笑っているタクト。そのうち足をばたつかせるようになり、とうとうコウの怒りが限界まで突破した。  顔を掴んでいた手に力を込め、思い切り指を食い込ませる。  すぐに痛みにより動きは落ち着いたが、それでも笑われたことに怒りはなかなか収まらなかった。  しばらくの間、ソファの上では二人の戦いが繰り広げられていたのであった。

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