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プライステイスト39
「ねぇコウ」
「何だ?」
「俺もう一本ワイン飲んだ気がするんだけど、覚えてないんだ」
「そうか。俺のとっておきだったんだけどな」
ソファでコウがタクトに膝枕をしながら二人は寛いでいた。
タクトは結局数時間が経過しても途切れた記憶の先は思い出せないでいた。
「あれ、やっぱり飲んでたの?」
「俺が止めても飲んでたな。弱いくせに」
「弱いって……そんなことはない、はず」
口を尖らせながらブツブツと何かを言いながらコウの膝の上を何度も往復していく。
しばらくそれを繰り返していたが、コウの顔がよく見える真上でピタリと止まったところで、何か閃いたのか急に笑顔になる。
「コウが俺にそのワインの味を教えてよ。そうすればコウの食べたい料理が作れる!」
「嫌だ。お前自身で考えて作れ。俺はそれ以外の料理はお前のもんだと認めない」
「えぇー、何それ!? ひどーい」
「忘れたとは言わせねーぞ」
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