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秘密の味11

 そこで黙り込んでしまった。この人をこれ以上あの場にいさせては、また吐いてしまう気がしてしまった。  俺は一つの案が思い浮かんだ。 「ねぇ、俺が送ってあげるからもう帰ろ?」 「……もったいない」 「俺はカナさんに倒れられる方が嫌だ」 「……分かった」 「じゃ、俺が荷物取ってきてあげるから店の外でちょっと待ってて」  俺は先にトイレから出て行き、早足になりながら皆が集まっている席へと戻っていった。  だいぶ時間が経っており、鍋の中身はほとんどなくなっていた。 「おかえりー。金森さんどうだった?」 「今日はもう限界みたいっす。なんで、俺が送ってきます」  自分の荷物をまとめてから、彼の荷物をまとめる。近くの席に座っている人たちは、心配そうにこちらを見ていた。

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