95 / 214
秘密の味12
忘れないうちに、俺は財布の中から万札を取り出し、隣りにいた人に渡しておいた。
「俺と金森さんの分の会計、お願いします。んじゃ、お先に失礼します」
ちらほらと飲み食いしながら挨拶をする人たち。俺はそのまま去っていった。
念のためにトイレを確認すると、金森さんの姿はなかった。少し安心したところで店の外に出ると、俺の言ったことを守ったように外の椅子に座っている姿があった。
「おまたせ。荷物持ってきたよ」
重い頭をゆっくりとこちらに向け、上着を受け取って羽織り、バッグを掛ける。
よろよろとした動きで立ち上がると、ゆっくりと出口へと向かった。俺はその隣に並んで歩く。
「カナさん、おじいちゃんって言われることない?」
「うっさい」
ともだちにシェアしよう!