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いつかのさけ20
「桂木、そんな顔してると美味いものも美味くなくなるぞ」
「岡崎さん……」
「俺は別に、どんなことしてても別に何とも思わないよ。とりあえず笑っておけ。笑顔笑顔!」
ニッと歯を見せながら笑う岡崎。どうにかして桂木の調子を戻そうと必死になっているその姿は、当の本人にもしっかりと伝わったようだった。
きょとんと驚いた表情を浮かべたと思ったら、今度は笑いだした桂木。あっという間に元の調子に戻ったようだ。
「あはは、岡崎さん、その表情いいっすね。ずっとそう思ってましたよ」
笑いながら再び酒を飲む。
ようやく美味しさを取り戻したようで、桂木は一気に残りを飲み切った。再び徳利から注ぐが、半分程度入ったところで空になってしまった。
「あれ、もうない……」
「じゃ、新しいの頼むか」
岡崎が店員を呼ぼうと振り返ったところで、店員は注文したものを持ってやって来た。
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