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いつかのさけ34
「あれ、若松さん禁煙したんじゃないんですか?」
「……疲れた。でも、本数は減ったから」
「それ、失敗って言うんじゃないんですか」
「…………そんなこと、ない」
片倉に失敗と言われても、頑なにそうではないと言い張りながら吸っていく。
先に吸っていた片倉のタバコはすっかり短くなり、もう限界となったところで火を消す。今度は片倉が若松の方を手持ち無沙汰に見ていた。
だが、特に話すこともなくただ火と煙を眺めているだけだった。
他の客がガヤガヤと話す声が耳に入ってくる二人の空間は、そこだけ少し切り離されているようである。
特に不快感を覚えている様子はなく、このままでも十分という様子であった。
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